玖 ページ10
「歌仙、あんたの時から思ってたけどこういうのってかしこみかしこみ的な呪文はないもんなの?」
「それに関しては審神者の技量によるものだ、君の場合それでも大丈夫なんだろう。」
「おいおい今度の大将は随分傷だらけだな、ちょっくら俺っちが手当しなおすぜ。」
そう言うと薬研は少女の手を取り、歩き出した。
「ちょ、そういうのいらないし、第一あんたできるの?」
「多少の医療なら心得がある。」
幼い子供ながらもやはり刀、少女の体は抵抗もできぬまま引っ張られて行ってしまった。
「きちんと治療しないと治るもんも治らねえ。」
薬研は慣れた手つきで薬を塗り、包帯を巻いていった。
「そういうのいいよ…適当に包帯巻いとけばいいんだから…。」
「だめだ、俺っち達は刀だ。だから手入れをすれば傷は治る。だがあんたは人間だ。少しの傷でも菌が入ればすぐ死ぬことだってある。だからこうして手当しなきゃならねえ。…っとできた。何分急ごしらえだが一先ずはこれでいいだろう。」
「ほう、綺麗なものだね。」
「今はこれだけだが色々揃えば早く綺麗に治る。しかし、何でこんなに傷が多いんだ?痣、切り傷、いろんな傷がある。転んだとかでは説明がつかないと思うが?」
あー…また説明しなきゃなんないのか…。
「それは来る途中に敵と遭遇してね。」
歌仙が言った。当然嘘だ、敵には遭遇などしていない。少女は驚く。まさか歌仙が嘘をつくなど思っていなかったからだ。
「…まあそういうことだったら仕方ないな。よろしくな大将。」
薬研はふっと笑い、少女に向けて手を差し出した。
「よ、よろしく。」
少女も手を差し出し、握手を交わす。
嘘なのがまるわかりだが、事情があるようだから聞くのはやめといてやるか…。
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作者名:ごごねこ | 作成日時:2018年5月17日 11時