人の心は神に欺けぬ【刀剣乱舞】 (ページ29)

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最終話ページ29

私はすぐに本丸へ帰った。皆“おかえり”と出迎えてくれた。その日はもうお祭り騒ぎ。酒を飲んだり、踊ったり、歌ったり…楽しくて暖かかった。それは深夜まで続いた。さすがに深夜だったせいか酔いつぶれたり、眠気だったりで皆眠ってしまった。私も部屋に戻ろうと縁側に出ると、歌仙が座っていた。

「…やあ君か。」
「どうしたの、こんなところで。雅じゃないから自分は縁側にいました、ってやつ？」
「どうもああいうのは性に合わなくてね。」
「あはは……ねえ歌仙。なんであの時私の名前、知ってたの？私、こんのすけ以外には言ってないのに。」
「……ある女性の話だ。彼女は審神者だった。明るくて、綺麗で、誇らしい主だった。彼女は身籠り、子を産んだ。彼女はとても喜んでいた。本丸で暮らすにはこの状況は危険すぎるという理由で子を彼女の時代にいる身内に頼んだらしい。いつか子と共に暮らせるように願っていた。子の名前も聞いた、Aってね。」

歌仙は悲しそうに語った。

「なんでそんな話……まさか…。」
「その子が君だ。」
「なっ…あ、ありえないよ。だって歌仙は私が選んだ初期刀で…。」
「彼女がこんのすけに頼んだそうだ。死ぬ間際に。」

“私はもうすぐ死ぬ…できれば娘には託したくはなかった…。こんのすけ…この歌仙兼定を娘に託して…？私と共に色んなことを学んだ歌仙とならきっと……。歌仙…ごめんね…できれば貴方を戦いの道から外してあげたかった…。”

「…歌仙が母さんの刀…。」
「前の主のことを引きずらぬよう彼女に関する記憶だけ消された。けど思い出してようやく合点がいったよ。君が彼女と似ていたからだったんだ。」
「母さん…ありがとう…歌仙を残してくれて…。」
「さて、僕は君の真名を知ってしまったわけだが…君は僕のもの…ってことでいいかな？」
「…え。」

歌仙の言葉に私はぼんっと赤くなった。

「じゃあちゃんと言おうか。…A、僕の妻になってくれるかい？」
「……うん。」
「おめでとう！主！」
「なっ！？」

部屋から乱や清光、短刀達が飛び出してきた。周りは完全祝福モード。恥ずかしさで死にそうだ。
でも…。

「あはは…聞かれていたようだね、主。」
「そうだね…。」

でも、こういうのも幸せなんだ。本物の幸せ。大事にしたい、彼らと一緒に…。

「そういえばあの神様、また襲ってきたら…。」
「僕達が結ばれたからきっともう来れないさ。」
「そういうもんなのかなぁ…。」