29 ページ29
そのあと、どうしたか知らない。
ちゃんとそのコンクールに出したのかどうか、大野さんは何も言わなかった。
年が変わって、寒い冬が少しずつ温みだして。
小さな花が蕾をつける頃、オレは大学を卒業した。
卒業旅行にも行かず、最後の方はずっと大野さんの部屋で過ごした。
潤くんは友達とあちこち行ってきて、そのたびにお土産を買ってきてくれたけど。
誘われてもオレは笑って断った。
自由な時間の終わりはあっという間で。
たぶん、社会に出たらもう、あの部屋の扉をくぐることはほとんどなくなるだろうとわかっていたから。
そんなオレに大野さんは鍵を渡してくれて。
「好きにいたらいいよ。なんか、帰ってきてニノがいるとうれしいし」
笑ってそう言った。
もう、あと１週間もすれば新しい生活がはじまる。
それが少しだけ楽しみで、でも怖かった。
珍しく玄関のチャイムが鳴って。
出ると郵便局の人が大野さん宛の速達を抱えていた。
サインをして、受け取る。
差出人の名前を見て、ドキリとした。
それはあの日見たコンクールの案内にあった名前で。
もしかして…と思ってその募集要項をネットで検索した。
すでにその応募は締め切られていて。
結果は後日。
その日程がちょうどこの時期だった。
封筒を持つ手が震える。
「出してたんだ…」
そう思うと同時に、その結果がここにあるのだと思うと勝手にオレまで緊張した。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 480人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LILY(プロフ) - うささん» うささん♪はじめまして！読んでいただいてありがとうございます^ ^今回の話はちょっとファンタジー要素が強くて…大丈夫かなぁ？とドキドキしていたので、そんな風に言っていただけてすごくうれしいと同時に少しホッとしました。ぜひこれからも遊びに来てくださいね！ (2016年1月14日 8時) (
レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
うさ(プロフ) - LILYさん。はじめまして。お話はいつもずっと読ませていただいていました。どんな作品も大好きですが、今回のお話の切なくてでもほっこりとするこの気持ちがお伝えしたくて、コメントさせていただきました。これからもずっと読ませていただきたいです。 (2016年1月14日 0時) (レス) id: a90a7da1d6 (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - マコさん» マコさーん！！！キャー（≧∇≦）遊びにきていただいてありがとう♪うれしいです^ ^/タイミング、難しいですよね…私も不義理ばかりなので何も言えません> <ウフフ、また是非遊びにきてくださいませ。そして今年もよろしくお願いいたします！またお会いできるかなぁ？ (2016年1月6日 9時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
LILY(プロフ) - 奏さん» 奏さーん！あけましておめでとうございます^ ^/天と地でそれぞれに思いを馳せる二人でした。幸せは見えているところだけじゃなくて、きっとその先知らないところにもあるんだよーっていう…ね。ほっとけないデキる翔さん（笑）私も書いてて一番好きだったかもです♪ (2016年1月6日 9時) (レス) id: ec7070c826 (このIDを非表示/違反報告)
マコ(プロフ) - LILYさん、こちらでご挨拶させて頂くのは初めましてのマコです。昨年の初めましてのあの日から、こっそり読ませて頂いてました…！ご挨拶するタイミングを逃しに逃し、ここのお話の完結を機に、ひょっこり現れました。皆が幸せになる素敵なお話ありがとうございました！ (2016年1月5日 10時) (レス) id: d9dcf4388e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LILY
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/Colorfulstory/
作成日時：2015年12月22日 7時
