22話 ページ22
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夜ご飯も出され、今度はお粥ではなく普通のお米だった。蘭は箸が使えない彼女に持ち方を教えた。
少しぎこちないが、何とか持てた彼女は、お米を挟んでみた。が、呆気なくポロポロと碗の中に落ちていく。
「箸はまだ難しいかもしれないですね。やはり最初は匙にしましょう。はい、どうぞ。」
優しく小さな匙を渡す蘭に彼女は申し訳なさそうな顔をした。
匙なら今日のお昼に白狼が食べさせてくれた時に使っていたから使い方はわかる。
彼女はご飯を掬い、口に入れた。お粥みたいに飲み込めないので、噛むという慣れない動きを繰り返した。
「どう?美味しい?」
白狼の問いかけに彼女はこくっと頷いた。すごく美味しそうに食べる彼女を見て、蘭と白狼は改めてもっと美味しいものを毎日食べさせてあげようと決意したのだ。
結局全部は食べきれず、少し残ってしまった。でもその量はお昼に比べればだいぶ少なく、彼女の食欲が少しずつ標準に近づいた何よりの証拠である。
「この後はお風呂ですが、私と一緒に入りましょう。傷もありますので。」
きっと彼女はお風呂さえ知らないのだろう。そう二人は思った。だが、予想とは反対に彼女はまるで分かったかのように頷いた。
「!お風呂、入ったことあるの??」
『コクッ』
驚きの事実。だが、それは喜ばしいことだ。彼女が一つだけでも普通のことを知っているというのだから。
ご飯も知らない彼女がお風呂には入ったことある。二人はその事にほっとした。
蘭は彼女の服を用意し、その手を優しく引いて部屋を出た。白狼は食器を下げに先に行ってしまった。
この屋敷の夜はとても静かだ。それでいて、夜空がまた釘付けになるくらい綺麗である。
廊下をゆっくり歩いていると、曲がり角から人影が出てきた。
それに気付いた彼女は震えながら蘭の後ろに隠れた。蘭は彼女を安心させるように背中を摩ってあげながら、その影に声をかけた。
「こんばんは、小春さん。」
二人に気付いた、小春と呼ばれた女性はゆっくりとこっちに向かってきた。
肌蹴た着物から露になっている白い肌、耳下までの金髪のショート、紫色の瞳。蘭とはまた違う美しさ、大人の女性の雰囲気を帯びている。
その妖艶さに幼女は思わず息を飲み込んだ。
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鈴桜(プロフ) - めいさん» 夢主よかった……そして、白狼!!格好いい!!風の神様だからスピードが早いんですね。続き楽しみに待ってます (2020年8月18日 16時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - 鈴桜さん» わあ、嬉しいです!刀剣乱舞じゃないのに、読んでくれるとはっ。頑張ります( ̄^ ̄)ゞ (2020年8月17日 19時) (レス) id: 6cecd18213 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - 新作〜〜!!待ってました。どんな風になるかワクワクしながら読ませていただきます (2020年8月17日 19時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
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