21話 ページ21
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どう謝ろうと彼女は悩んだ。もう怖くない。この人は、蒼流は白狼の友達で、凄く優しい人。
布団から出た彼女は、昔どこかで見た、人と人が手を取り合う光景を思い出した。
それを真似するかのように、蒼流の手を震えながら握った。その行動に白狼達は驚きを隠せなかった。
「じ、自分から、触れた……」
白狼はほんの僅かに嫉妬してしまった。だがそんな彼に構っている余裕などなく、蒼流はただ戸惑っていた。
さっきまで自分を怖がっていた女の子がなぜ今自ら自分の手を握ってきたのか。それに、手が震えている。
「…怖く、ないのか?」
蒼流のその質問を待っていたかのように、彼女は即頷いた。二人はまたその答えに驚いた。
彼女が一体何を考え、どうしてこのような行動を取ったのかわからない。
これ以上聞いても、声が出ない彼女を困らせるだけだと考えた蒼流は優しくその手を握り返した。
「ありがとう。これから宜しくな。」
珍しく微笑む蒼流、そしてそれにつられ彼女も自分の気持ちが少しでも伝わっていたことに嬉しさを感じた。
彼女はほんの少しだけ、彼を自分と重ねていたのだ。
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「傷もねェ、術でもねェ、至って普通……そうだな、考えられる可能性は二つ。」
「!!そ、それはっ?」
茶髪の癖毛の彼は医療を心得ている。蘭は迷わず彼に質問をしに行ったのだ。
その選択は正解だった。
「一、ストレスで声が出なくなった。
二、物心ついた頃から自分は声が出ないと思い込まされていた。どっちかだな。ま、話を聞く限り後者の方が可能性高いかもしれないな。」
お前は話せない。忌み子に声なんて必要ない。そう言われ続けて育ったのなら当然声なんて出るわけもない。
弟の方は怖くなりニット帽を深く被りながら話を聞き、蘭は唇を噛み締めた。
「…声、出るようになりますか…?」
「…ああ。器官自体に問題は無いからな。後はあいつ次第だ。時間はかかるが…」
「わかりました。ありがとうございます。」
蘭はそう言って、静かに部屋を出ていった。
「兄貴、人間ってそんな酷いやつらばかりなのか…?」
彼は弟の質問に目を見開き、少し難しい顔をして頭を撫でてあげた。
「そんなことはないぜ。人間だって良い奴は沢山いる。……あの子は、たまたま悪い奴らの所に迷い込んだだけなんだ。」
「……そっか。」
弟はこれ以上何も聞かなかった。
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鈴桜(プロフ) - めいさん» 夢主よかった……そして、白狼!!格好いい!!風の神様だからスピードが早いんですね。続き楽しみに待ってます (2020年8月18日 16時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
めい(プロフ) - 鈴桜さん» わあ、嬉しいです!刀剣乱舞じゃないのに、読んでくれるとはっ。頑張ります( ̄^ ̄)ゞ (2020年8月17日 19時) (レス) id: 6cecd18213 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - 新作〜〜!!待ってました。どんな風になるかワクワクしながら読ませていただきます (2020年8月17日 19時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
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