□階段□ ページ18
夏樹side
俺が見ているものは嘘だ。夢だ。空想世界だ。
そう思うほど驚きが隠せなかった。Aが豹変するなんてあり得ない。俺から嫌われたいから? 俺が、嫌いだからか?
夏樹「A、」
俺がこのの声はもう彼女に届いていないのか、大声をあげてただただ笑うだけだった。
叫ぶ彼女の両親。家族なのにその顔つきは別人で、どんどん遠いものになっていく。
あの笑顔は、
あの素直な顔は、
あの優しい声は、
あの強い背中は、
あの、Aは…
何処なんだよ。
あ「夏樹-?」
突然呼ばれた声に無意識にあのAを重ねてみていた。
夏樹「何だよ…!!」
あ「あはは、怒らないでよ〜。別れも何もないでしょ?そもそも《付き合ってない》んだし」
…笑顔で初めての甘ったるい口調でそういう彼女に周りの顔がひきつる。
美森「何、言ってるの?」
付き合って、ない?
その言葉が俺の心を抉った。
…ざけんなよ…
夏樹…?と呼ぶ周りの声。そんなもの耳に入らない。俺は心のそこから大声を出した。
夏樹「ふざけんなよ!」
怒鳴る俺を見て目を見開く親。
怒りをぶつけるその矛先は、
あ「ちょうどよかった。自分から出てくから気にすんなよ」
最後の語尾はきつく感じる。だが、顔は笑っていた。目は…真っ黒でわからなかった。
夏樹「早く出てけよ!!」
叫ぶ俺を横目に彼女は俺の父親の肩を叩いていて去っていった。
夏樹「2度、顔見せんな!」
この時の俺は、底から吹き出した怒りをぶつける獣だった。
「A待ちなさい!」
声を張り上げた彼女の両親は背中を追って飛び出した。
--夏樹…、夏樹、と名前を呼ばれ、俺は膝から崩れ落ちた。
夏樹「A…A…!!」
床に拳をぶつける。
怒りと、悲しさ、寂しさを込めて力一杯、何度も何度も。
何でなんだよ!!、と叫びながら。
美森「夏樹…」
悲しげに呼ぶ声。当たり前、と思っていた彼女の存在は心から抜ける。…まるで、穴が空いたように。
絶望に浸る俺に、親父はゆっくりと近づいてきた。
「夏樹」
夏樹「何だよ…」
俺は気力なしに下を向いたままだった。
次の瞬間、親父の言葉にゆっくりと意図を理解するようになる。
「Aちゃん、去り際にこう私に言ったんだ。《彼をもう1度心から愛してください。夏樹を、彼をよろしくお願いします》と」
予想だにしない言葉に皆の表情が重なる。
夏樹「一体どういうことだ…」
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Mai(プロフ) - 見たい!つづき (2021年10月7日 16時) (レス) @page21 id: c466e4313f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいまる(プロフ) - 更新楽しみにしています! (2021年1月3日 13時) (レス) id: a0d73dbad3 (このIDを非表示/違反報告)
りな☆(プロフ) - 一気読みしました!更新頑張ってください!面白いです〜! (2017年5月11日 23時) (レス) id: f0df852b63 (このIDを非表示/違反報告)
??¦菅田 すぬ ?(プロフ) - 美姫さん» ありがたいお言葉頂戴いたします。ハイ!遅くなりますが、更新させていただきます!今後もよろしくお願いします! (2017年4月4日 18時) (レス) id: c8b02da013 (このIDを非表示/違反報告)
??¦菅田 すぬ ?(プロフ) - 東雲さん» ありがとうございます。なかなか更新出来ず申し訳ございません。必ず完結させられるよう頑張ります! (2017年4月4日 18時) (レス) id: c8b02da013 (このIDを非表示/違反報告)
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