ひねくれ兎。【学校のカイダン】 (ページ34)

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□階段□ ページ34

あ「自覚がなくても覚悟はあったはず。なぁ、覚悟あるんだったら本音ぶつけてこいよ！直接いったらいいだろ？」

体を震わすエミリー

ｴﾐﾘｰ「覚悟はあるわよ！好きだったのに！初めて私の話をちゃんと聞いてくれた先生なの！直接言いたいけど怖いのよ！！」

涙を流しながら叫ぶエミリーにふっ、と口元が緩まった。

あ「漸くだな、やっと本音いってくれた」

ｴﾐﾘｰ「え…?A何で－－」

立ち上がっていた私は再び腰を下ろした。
それを見て、エミリーも腰を下ろす。

あ「エミリーって、いつも大人だよな。たまには我儘とかいったらいいのにってずっと思ってた。…我慢してると何かが壊れるから。だから、態と攻撃的な態度をとって苛立たせて怒り任せに本音をぶちまけれるようにしたんだよ」

やっといってくれた、とエミリーに微笑みかける。

あ「怖いのは分かる。いきなりさらけ出すのも怖い。でもな、エミリー」

髪で隠れた涙で濡れたエミリーの顔が上がる。
そして、私はエミリーの手をとった。

あ「あんた独りじゃない」

彼女の固く握られた手を両手で包み込む。

あ「それを忘れるな」

手を離すと呆然とする彼女のスカートの上にハンカチを置き、背を向けてそこから立ち去った。

-その日、彼女とは一言も交わすことはなかった。

--複雑な心境の中、日は変わった。毎日と続く生徒会の署名運動。

そしてふら、と肩を落とし出てきたエミリー。彼女は茶色の封筒を両腕で抱え込んでいた。
不思議に思った私は、皆の輪から1人抜けていた。

あ「エミリー?」

ｴﾐﾘｰ「理事長にパリ…進められたの」
エミリーの一言一言から離れたくない意思が伝わってくる。

あ「壺井冬真と連絡は?」

悲しそうに首を横に振る。
直接いいにいこう、と言おうとするのを南に遮られた。

南「A、そんな子構わなくていいわ」
リングもここにあるわよ、と見せびらかすように掌にのせる。

私たちに気づいた生徒会が、エミリーの封筒の中のパンフレットを手に取り、敵視する。

「お前も壺井と一緒に逃げる気かよ！」

憎しみ込めたその言いぐさに少なからず腹が立った。でも、それ以上に腹が立ったのはきっとエミリーの方だろう。

気づけば事態は大きくなり、事実無根なことも言われているのだから。

「違うって言うならここに署名しろ！踏み絵だ踏み絵えええ！」

狂ったように叫び、エミリーを追い込む。私はエミリーの前に腕を出し、叫ぶ者に近づいていった。

「ふざけんなよ」