６話 ページ8
そして、何分くらい経ったのだろうか？ 少なくとも十分とは経っていないだろうが、Aは海風が妙にひんやりして来たのに気づいた。そういえば微かではあるが、この船は振動しているようだ。
(おや、動き出したのかな……)
と思っているうちにも、スピードはぐんぐん上っていくらしかった。今にも吹き飛ばされそうな風圧が加わってきた。
息もできない風圧に慌てたAは、不意に二三歩ばかり離れた手すりにつかまったが、船内に転げ込んでしまった。
その物音を聞きつけたのか、船室のドアが開く。ひょっこりと顔を出したのは、あの美しい女性だった。
「あら……」
壁にもたれかかっているAを見てると、ひどくびっくりしていた。
「あ、さっきは失礼しました……。もう一度叔父に会いたいと思ってるうちに、動き出したものですから……」
ぴぺこりとお辞儀をすると、出来るだけ好意を持たれるような笑顔を作る。
「まあ、デッキにいらしたの……。よく飛ばされなかったわね」
「まったく……、すごいスピードですね。おまけにスッーと出たのでいつ動き出したかちょっとも知りませんでした」
と一息して、
「それにしても、エンジン音がしませんね」
「……エンジン？」
彼女は聞き返したけれどすぐ一人で頷いて、
「そんな旧式なもの、つけてませんよ。これは電気船ですもの」
「ははあ……するとやっぱり蓄電池かなにかで……」
「蓄電池なんて、そんな重たいものなんて使ってませんわ」
「では、どういう仕組みで……」
「どういう仕組みって……、なんて言ったらいいのかしらね。無線で電力を受けて、それで動いているのよ」
「ははあ……」
「つまりラジオのように放送されている電力を受けて、動かしているわけ」
「……うまいことを考えたもんですね。しかしそんな『電力放送局』があるんですか？」
「あるわよ。あるから動いているの」
「……なるほど」
「あなたの叔父様の発明よ」
「僕の叔父ですか……。ど、どこにいますか？」
「あちらの機械室に……ご案内しましょうか？」
「いや、後でいいですよ。僕は高木Aという者です」
「さっきお聞きしましたよ。私の名前は櫻井日菜子よ。さっきまで星を観察していたの。一緒に観察しませんか？」
Aはとっさに目をまるくした。自分は星が好きだったけれど、雅夫さんは全く見せてくれなかったのだから。
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うららk - いなりさん» 読んでくださりありがとうございます。更新は遅いですが、よろしくお願いします。 (2017年12月4日 18時) (
レス) id: 469d2368ce (このIDを非表示/違反報告)
いなり(プロフ) - 読ませていただきました！縦書きというのも始めてみて面白かったです！オリジナルでも楽しく読ませていただきました！更新これからも頑張ってください！ (2017年12月2日 18時) (レス) id: c87849eac6 (このIDを非表示/違反報告)
うららk - 星月夜*ミルトニア[3DS]さん» 読んでくださりありがとうございます。あなたのイベントに参加できて、嬉しく思います。もう少しで完結しますので、そこまで読んでくださると嬉しいです。まあ、話は長いのですが……。 (2017年11月24日 23時) (レス) id: 469d2368ce (このIDを非表示/違反報告)
星月夜*ミルトニア[3DS] - この度はイベントに参加していただき、ありがとうございます！名前変換オリジナルということですが、凄くストーリー性も高く素晴らしい作品でした！ありがとうございました。 (2017年11月24日 22時) (レス) id: 4d66220430 (このIDを非表示/違反報告)
うららk - ファンタジーはやめて、SFにしました。本当に申し訳ありません。 (2017年11月23日 9時) (レス) id: 469d2368ce (このIDを非表示/違反報告)
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