次、いつ会えますか？ (ページ1)

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出会いページ1

しぃんと静まり帰る夜。月が煌々と輝いている。

夜だと言うのに、あるいは夜だからか、その部屋は真っ暗だった。自慢げに輝いている月の光も、カーテンで遮られれば為す術もない。
その部屋の唯一の光源は、ひっそりと青白くひかる小さな液晶画面のみだった。

その画面にはトークルームが映し出されており、直近のメッセージは、

『楽しみにしてます！』

なんて可愛らしいもの。
しかし、そんな可愛らしいメッセージに不釣合いなほど、暗い部屋の中で一人の男はうっそりと微笑んでいた。

たたた、と足早に液晶画面をタップして、

「僕もです」

と打つと、男は満足気に液晶の電源を切った。
その後も、男は遂に真っ暗になった部屋の中で、心底陶酔していると言わんばかりにうっとりとどこか宙を見つめている。

「楽しみだなぁ…どんな人なんだろう…」

ぽつ、ぽつ、と独り言と言うにはあまりに蕩けた声で呟いていく男。はたから見たら完全に異常者だ。しかし、そんなことはきっとこの後どうでも良くなってくる。

「……Aさん、♡」

この男は、私たちが思っているよりもずっと、色んなものが壊れてしまっているのだから。

＿好きな人の事だったらなんでも知りたい、そういう気持ちはいけないものなのだろうか？

男がそんな気持ちを抱え始めたのが小学校の頃。初恋の人から手を振り払われた時。

［もう着いてこないで！］

「え、…なんで？」

あまりの衝撃に、少年の頭はついて行かなかった。ただ最愛の人に拒絶された。それが彼の始まりなのかも知れない。

［こんなのおかしい！どこ行ってもいるなんて…］

「だって、君が言ったんだよ、休みの日は家の前の公園で遊んでるって。木曜日はバレエ教室に通ってるって、だから、ぼく、…」

［普通はそんなことで休みの日に毎日のように人の家の前に来ないし、バレエ教室に一緒に行ったりしない！お願いだからもう来ないで！］

「なんで、だってぼく、君のことが……、っ」

おかしい、普通じゃないと言われて、少年の胸は酷く傷んでいた。必死に自分の思いを伝えようと、そうした瞬間、彼はぴたりと言葉を詰まらせた。

なぜなら、その言葉の始まりを聞いた最愛の人の目が、およそ人間を見る目ではなかったからだった。その目は恐怖に濡れて、まだ未発達な肩はふるふると震えていた。

言葉よりも明らかな、拒絶だった。

その頃から、男の瞳には光が宿らなくなった。
冒頭の問いを、重く抱えたまま、月日が流れた。