邂逅 ページ2
Aside
その日見たのは、冷や汗の流しながら無理してにこにこしているお父さんと、今にも泣きそうになっている、小さな可愛い男の子だった。
父「ほ、ほぉーらA、Aの弟だぞ！」
『…は？？』
倉町A、齢7歳にして、とんでもない爆弾を落とされた。
父『Aは弟が欲しかっただろ？だから…』
『…お父さん、何言ってんの？お母さんもうずっと家帰ってきてないじゃん。』
父「え、えぇっと…」
キョドキョドと視線を気まずそうに動かす父。ほんとにこんなやつが父だなんて恥ずかしい。
『ちゃんと話して。この子は誰？』
そう凄むと、観念したように父は話し出した。
父「実は…パパと付き合ってた人の子供なんだ。」
『…はあ？！』
おいおいクソ親父、ついに落ちる所まで落ちたか。思わず頭を抱える。
父「ご、ごめんよ、つくる気はなかっ」
『そういう問題じゃないでしょ！？』
私がもう一度大声をあげると、父の隣にいた男の子がびくりと体を強ばらせ、ところなさげにふるふると震えている。
それがあまりにも可愛そうで、父をきっと睨みつけて、その子に近づいた。
『初めまして。』
「は、はじめまして…」
『私、Aっていうの。きみは自分のお名前言えるかな？』
「え、っと、かずや…」
「そう、和也くんね。」
しゃがんで目線を合わせると、その子の大きな瞳が小さく揺れた。手をぎゅっと握って声をかけてあげれば、段々とこわばりが溶けていくのを、握った手のひらで感じる。
『突然でごめんね。今日から私は、あなたのお姉ちゃんになるの。』
「おねえ、ちゃん…？」
寂しげに、そして不思議そうにこちらを見つめる和也くんに、どうにか安心させてあげたいと思った。思わず、ぎゅうっと和也くんの体を抱きしめる。
『うん。今日から私たちは家族。何があってもずうっと一緒。私が和也くんを守る。だから、怖がらなくていいんだよ。』
そう告げると、和也くんはぼろぼろと私の腕の中で泣き出してしまった。
こんな小さな子が、一体これまでどんな生活をしてきたんだろう。その体は細くて、少し力を入れれば折れてしまいそうな程だった。
守ってあげなければ、と、私の母性が芽生えた瞬間である。
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作者名：作者N | 作成日時：2023年1月14日 22時
