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見えない人への歪んだ想い ページ11

ひなちゃんが持ってきていたファッション雑誌を読んでいた時の事。
「良いなあ…。」
「え…?」
そのページを覗き込んでみると、細身の
可愛らしい女の人がポーズを取っていた。
それを見て、私の心の奥が少しだけむず痒くなった。

途中まで読んでいた雑誌を閉じ、ベッドに潜り込む。
「もう読まないの?」
「うん、もう良い。」
それだけ答え、目を閉じる。
これ以上見てたら虚しくなっちゃうもん。
私なんかじゃ、あんな風に服を可愛く着こなせない。
自分でも気が付かない内に雑誌の女の人と私を比べて、更に哀しくなる。
パタン、と雑誌が閉じられる音。
直後にばさりと掛け布団が大きく波を打った。
「…ひなちゃん…?」
「凜が寝るなら、私も寝る。」
「雑誌、もう良いの?」
「また後で読めるから良いよ。」
言いながら、彼女は私を優しく抱き寄せてくる。
「ひなちゃんが見てた雑誌に写ってた人、美人さんだったね。」
「…うん。私あの人好きなんだ。
あんな風に細くなりたいの。」
好き…なんだ。
「そっか…。
私もあの人みたいになったら、ひなちゃんは
もっと私の事を好きになってくれる…?」
「……もしかして凜、あの人に妬いてるの?」
心のむず痒さの正体に気付き、赤くなってしまう。
「…違うよ、そんな事無いもん。
あの人はスリムで可愛いけど、私はどっちでもないもん。」
「ふふ、可愛い。」
音も無く口付けられ、更に顔を赤くする。
離されると、囁く様に言ってきた。
「凜はそのままで良いの。
あの人と一緒にならなくて良い。
私は今の可愛い凜が好きなんだから。」
「じゃあひなちゃんは、その…、
私とあの人のどっちが好き?」
「…凜に決まってるでしょ。
あの人はただの憧れ。
凜は…、私に本気の恋を教えてくれた女の子。」
ここまで言われると、私の顔が耳まで赤くなっていた。
知らない人への嫉妬、それがバレた時の羞恥、
彼女からの甘い言葉による照れの感情が入り混じっているからだ。
「じゃあ何でさっき、良いなって…。」
「あの人が着てた服を私も着てみたいなって思って。」
私の勘違いだったんだ。
それに気付き、今度は彼女に強めに抱き着いた。
「無理して変わっちゃダメ。吃驚しちゃうからね。」
赤い顔に手を沿えてそう言ってくる彼女。
顔に集まる熱とは違う温もりを感じながら、私は静かに目を閉じた。

「あの人、凜にどこか似てるでしょ?
だから私ね、あの人好きなの。」
私が眠っている間に彼女がそんな事を言っていたなんて、私は知らない。

ただ、耐えたくない。 ※微裏注意→←外の世界



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設定タグ:百合 , 短編 , オリジナル   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年12月7日 19時

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