Episode14 夜、走る。 ページ39
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敷過地の大きな屋敷が並ぶ一帯を抜けてバイクは海沿いの道に出た。
本邸に行くときには車で通ったバイカーたちに人気の道。
潤くんと走れたら素敵かもと思っていた道は、夜の中でひたすらに伸びる終わりのない道になっていた。
こんな道は素敵じゃない。
今すぐ終わってくれなくちゃ、誰かに追いつかれちゃう。
海に反射する街の明かりが頼りなく揺れているのが時々見える。
月はあんなに明るいのにどうしてこんなにもこの道は心細いのだろうか。
ぐんぐんと風を切っていくバイクは当然振り返ることもなく海沿いをひた走る。
追手が来ているかどうかも確認できないけど、とにかく前へと走るしかなかった。
私は必死に潤くんの背中にしがみつくことしかできなかったからどのくらい走ったのかわからない。
体感としては三、四十分というところかなという感じがするけど、それも正確かどうか自信はない。
バイクはゆっくりとどこかのコンビニの駐車場に停車した。
ヘルメットを取った潤くんが首をひねって心配そうに私を見た。
「大丈夫？降りれるか」
「なんとか…」
足を踏ん張って地面に降り立つ。
まだちょっと体が震えている。
バイク、怖かった。
「顔白いな。少し休憩だから温かいものでも飲むか」
私の頬に触った潤くんが心配そうな顔をする。
正直言えば私も休みたいけど。
「休んでて大丈夫かな？」
「屋敷からはだいぶ離れたし少しくらい平気だろ。休憩しないと持たないしな」
私の頭をわしゃわしゃと撫でた潤くんは先にコンビニに入っていく。
背中を追いかけて煌々と明かりの灯るコンビニに入った。
中は当然ごしやすい温度で何となく肩の力が抜ける。
「何か食うか？」
「そうだね……あ」
「なに、なんかあったか……もしかしてドーナツ？」
私の視線を追ってレジ横を見た潤くんがそう言いながら私を見下ろす。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
