Episode13 -6 ページ38
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まあるい月が私たちを見下ろしている。
その明かりが私たちを照らしてしまう前に、出来るだけ遠くに行かなくては。
今頃雅紀はどんな顔してるかな。
最後にホットミルクもらっておけばよかったかもしれない。
智くんは？
知らせは翔さんのところにも行くだろうか。
……お父様は、何を思うだろう。
跡継ぎがいなくなって困るかな。
それとも、娘が行方不明になって心配とかしてくれる？
わからない。
わからないけれど。
私はもう彼らの顔を見ることはできない。
前を見て、潤くんの背中に必死に抱き着く。
先へ、もっと先へと。
ごめんなさい雅紀。
きっと雅紀はすごく怒るだろうな。
さすがの智くんも、きっととっても怒るに違いない。
翔さんはどうだろう。
私のおてんばを許してくれたりとか…さすがにしないかな？
好きだという方と翔さんが幸せになってくれたらいいと願っているけど、ごめんなさい翔さん、あいさつも出来なくて。
どこにいても貴方の幸せを願っています。
今まで私を大切にしてくれた何もかもを私は捨てようとしている。
わかっているけれど、今更引き返すことはできない。
私は、彼に出会った。
出会ってしまった。
自分で自由に進んでいく人。
私を攫ってくれると、そう言う夜色の目をした
誰に何と言われようとも、この出会いだけは誰にもあげない。
間違いだなんて言わせない。
ぎゅうと掴んだ腰から潤くんの温もりが伝わってくる。
この温度だけは手放さない。
何を捨てても、諦めないと決めたのだ。
「(潤9くん、大好きだよ」
聞こえないと分かっているから呟く。
押し付けた背中に消えていく言葉は、きっと誰にも聞こえない。
痛いほどの風に流されてしまって、たぶん私の耳にだって。
まあるい月が照らす夜。
少年少女の、今までに一度もしたことのない大冒険が始まる。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
