Episode12 -2 ページ27
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いつもと同じに見えるけど、どことなくその表情は固い。
気が、する。
「実はAさんに大事な話がありまして」
「大事な話ですか…？」
「はい。先日、Aさんの話を聞いて思ったんです。Aさんが好きな人の話をするのなら、俺の話を聞いてもらうのもいいかなって」
「翔さんの、話……」
「あ、別に難しい話じゃないですよ。ただ…実は俺にも好きな人がいるって言う話です」
「！」
今度こそ冗談かと思った。
翔さんが何を言ったのかわからなくて、私たちの間に沈黙が走る。
好きな人。
好きな人…？翔さんに…？
「えっ！」
ようやく驚いて目を見開く。
視界に映る翔さんは苦笑いを浮かべていた。
「そんなに驚きますか？」
「驚きますよ…だって、そんな話は…」
一度も、そう言いかけて私は口を噤んだ。
そもそも、そんな話を私にするわけがない。
私だって翔さんに聞かれなければ潤くんの話はしなかっただろう。
私たちにとって互いは将来家庭を持つことになる相手なのだから。
私の考えなんて分かっているみたいに翔さんが「ふふ」と笑みを漏らす。
「真面目ですね、Aさんは」
「……そんなこと、ないですけど…」
「いいんです。俺も初めて人に言いました」
その言葉に私はまた驚いた。
誰にも言ったことない、翔さんの恋の話。
それを今私が聞いているなんて。
昔の私に言ったら心が折れるのか羨ましがるのか、どっちだろう。
ここにきてとうとう初恋は絶対にかなわなくなってしまったわけだけど、あの頃の私にそれを言うわけにはいかなそうだ。
なんて、今の私が好きなのは潤くんなのだけど。
翔さんじゃないけど、よく面倒を見てもらった親戚のお兄さんが結婚してしまう時のようなそんな寂しさが胸に広がる。
…残念ながら、実際にそんな経験をしたことはないけれど。
「どうしてその話を？」
「先日の件です。…つまり、Aさんとの婚約に関する相談なんですが」
三度、私は驚いた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
