Episode10 -4 ページ17
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でも私は、はいそうですかと納得するわけにはかない。
「それは分かっています、でも、潤くんが好きなんです」
「ダメだ」
間髪入れずお父様はそう言った。
苦虫を噛み潰したような顔をして声を荒らげる。
「お前は上条の令嬢として真面目に全うしてきただろう。櫻井の子息とも仲良くやってきた。なのになぜ今になって……今までのお前なら諦めることができただろう」
「…そうかもしれません。ですが、今回は諦めるわけにはいきません！」
潤くんは言ってくれた。
俺が何とかするって。
でもこれはたぶん私が何とかしなきゃいけないことだ。
そして潤くんならば、きっとこんな事態でも強い力で未来を切り開いていくような、そんな気がする。
そんな彼に憧れて、私も彼と同じように生きてみたいと思う。
小梅ちゃんを待ち伏せて連絡先を聞いてまで私に会いに来てくれた。
私を繋ぎ止めてくれた。
そんな潤くんだから。
私から手を離すことはしたくない。
「勝手なことを言っていると分かっています。でも、潤くんだけは諦めたくありません」
「ダメだと言っただろう。その潤という坊主に入れ知恵でもされたのか。その男のせいでお前が変わったというならとんだ悪影響だ」
「っ、そんな言い方！」
「そにかく、そんな奴とのかかわりは断ちなさい。お前には立場というものがある。いいな」
「お父様！」
お父様は椅子から立ち上がってしまった。
私の声にもう一度首を振って雅紀に声を掛ける。
「A、今日からしばらくお前はここで暮らしなさい。別邸に変えることも許さない。用事がない限り家から出ずに頭を冷やしなさい」
「お父様！」
「相葉、Aを自室へ連れていけ」
「……かしこまりました」
視界に頭を下げる雅紀の姿が映る。
手が、私の左手首を掴んだ。
こんな時でも怪我をしていない方の手を、ほんの少しだけ強い力で。
「待ってよお父様、もう少し話を…！」
「お嬢様、まいりましょう」
「離してよ雅紀！」
「なりません」
お父様が部屋を出ていく。
閉まる扉が立てたバタンという音は私の声にかき消されて聞こえはしなかった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
