Episode9 -6 ページ11
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本当に、私はいい友人に恵まれていた。
「うん、小梅ちゃんは大事な友達」
『そっか。……なぁ、A、ベランダに出られるか』
「ベランダ？出られるけど……、っ！」
私ははじかれた様にベランダに向かった。
カーテンを乱暴に引き開けて鍵を開ける。
なるべく音を立てないようにそっと引き戸を引いて、サンダルに足をつっかけた。
柵に身を乗り出す様にして夜の闇に目を凝らす。
「ここだよ、ここ」
見下ろした路地の中に、潤くんが立っていた。
スマホを耳に当てて、片手をこちらに振っている。
「潤くん……」
「よお、会いたかったから、会いに来た」
辺りが暗くてその表情まではうかがえないけど、街灯にぼんやり照らされた潤くんは笑っているように見える。
声はいつもの不敵な潤くんだった。
「潤くん…！」
今度こそ、彼に向かって呼びかけて、手を振る。
それに振り返しながら、潤くんは冗談のように言った。
「出てくんなよ。相葉さんにバレたらまずいから。……俺たちだけの内緒な」
潤くんが人差し指を唇の前で立てたのが辛うじて分かる。
内緒、というジェスチャーらしい。
私は伝わるようにと、頷きながら自分の人差し指を立てた。
「わかった、内緒」
「ん、いい子」
本当は駆け出したいけれどその衝動を我慢する。
潤くんの言うように、雅紀にバレたら大変だ。
潤くんはその危険を冒してでも、私に会いに来てくれた。
今は、それだけで満足しなくては。
「ピアノ、練習してるんだって？」
「知ってるの？」
「小梅が言ってたよ。Aさん、戦う気の様ですよ…ってさ」
「小梅ちゃん、そんな言い方…」
電話越しの潤くんが笑う声がする。
「案外おてんばだよな、お前は」
「……潤くんのせいなんだから」
「っ、……そうかよ」
潤くんが息をのむのが分かった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
