Episode8 -2 ページ2
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「……ほんとはさ、お前に触っちゃダメなんだろうなってわかってるんだよ」
そのまま頭を撫でながら潤くんが言葉を紡ぐ。
後悔のような、愛しさのような、よくわからない複雑な色でその言葉は私の耳に届く。
「お前を襲ったのはさ、俺が高校の時にケンカしてた連中なんだ。こないだ…ほら、お前が俺を拾った日。あの日に久々にもめて、返り討ちにしたんだけど……まさかあいつらがお前に手を出すなんて、想像できてなかった」
夜色の瞳で私を睨み上げた潤くんを思い出す。
あの日の彼は手負いの獣のような。
それでいて心の柔らかいところを守るような、そんな風に唸っていた。
「俺がお前に会いに行ってなきゃ、お前が襲われたりはしなかったはずなんだ」
「……それでも」
嫌な予感がして、私は潤くんの言葉を遮った。
どうしてか潤くんの言おうとしていることが、わかってしまうような気がした。
「私は潤くんに、会いたかった」
だから言葉を募らせる。
彼がその言葉を言ってしまう前に、私は潤くんを引き留めたい。
「でも…」
「私が好きで潤くんについていったの。だから…潤くんのせいじゃない」
もしかしたらお別れかもしれない、今度こそ本当に。
そう思ったのはきっと、雅紀に連絡先を消されたからじゃなくて、潤くんが自ら消えようとしているのだと感じたから。
あの日よりずっと今の方が潤くんがいなくなってしまうんじゃないかと怖い。
自分で決めた意思というのは、強制されるよりもずっとずっと強い。
「A…」
「私、すごく楽しかった。潤くんと出会ってからのこの一か月が、今までの人生で一番楽しかった。憧れていた通りの自由に触れられて、本当に…本当に、嬉しくて……楽しかったの」
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
