Episode12 -7 ページ32
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潤くんの目は真剣だった。
切れ長の大きな目。
意志の強い瞳。
写り込んだ私の顔は暗くてわからないけど。
「…っ、うん」
色々な気持ちを込めて必死にうなずいた。
何かを変えるためには、自分が変わらなければいけないと思うから。
「よし。夜の九時、ここに来る。出られる準備しとけ」
「分かった」
部屋の外が騒がしくなり始めた。
潤くんが勝手に入ってきたなら侵入者だと騒ぎになっているのかもしれない。
「まずい…じゃあ俺は行くよ」
「気を付けてね、潤くん」
「おう」
「私……待ってる。潤くんが攫ってくれるの」
何のヒロイン気取りだかわからないけれど。
私は潤くんにとってヒロインであればいいと思う。
「任せろ。お前を幸せにするために…必ず攫って見せる」
ちゅ、っと一瞬額に唇が触れた。
驚いた私に笑いかけると潤くんは颯爽と身をひるがえして庭の草木の影の向こうに消えていった。
私はキスをされた額を手で押さえながら窓を閉める。
ドキドキしている心臓は潤くんが捕まらないか心配なのか急なキスのせいなのかわからなかった。
「お嬢様！」
急に扉の向こうから声がした。
「雅紀？どうしたの？」
「屋敷に侵入者がいるようですがこちらに人影など来ていませんか？」
「！…来てないわよ」
ドキンと心臓が脈打った。
冷静を装って短く答える。
「そうですか、わかりました。念のため鍵をかけて部屋にいてください」
「わかった」
雅紀はそのまま中に入ってこないで去っていった。
足音が聞こえなくなってから安堵の息を吐く。
潤くんは無事に逃げられただろうか。
握りしめていたスマホを見つめる。
今の私と潤くんの唯一のつながりであるそれに、どうか潤くんが無事でありますようにと必死に祈り続けた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年12月10日 17時
