ガールミーツナイト《ars/j.m/0830》 (ページ46)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:74,219 hit

Episode7 -6 ページ46

.

連れていかれたのは薄暗い路地だった。

普段車で通学しているせいであんまり土地勘がないから、ここがどのへんなのかはわからない。
いつもなら通ることのない繁華街とは反対のエリアだということは分かるけれど、これでは家まで帰りつけないだろう。

「ほんとにこいつが松本の女かよ」

「あのビンボー学生とお嬢様に接点なんかあるか？」

「さんざん言っただろうよ、ほら！」

男たちは私をじろじろ見ながら言い合っている。

潤くんの友達かどうかはともかく、潤くんを知っていることは本当の様だ。

一番ひょろっとした男がスマホを二人に見せている。

それをちらりと見やったリーダーらしく男がシッシとそれを邪魔そうに避けた。

「そりゃ何度も見たって。だから特定できたんだろ」

「まぁなんでもいいさ。これで少しくらいあいつも分かるだろ」

「そうだな。やっちまおう」

ぞくりと背筋が震える。

足は固まってこれ以上動けない。

動いたとしても、男の人三人を相手に逃げ切れるとはとても思えない。

パニックになりかけた頭と妙に冷静な頭とが混在している。

混乱しているのだということくらいは分かった。

だからと言って解決策なんて出てこない。

「帰してください」

「悪いなお嬢様、そういうわけにはいかねぇん…だ！」

「うっ…」

おなかを殴られて喉の奥から声が漏れる。

上から下品な笑い声が聞こえた。

「なぁ、痛めつけるだけでいいのか？やることやっとこうぜ」

「それもありかもなぁ」

「じゃあじゃあ、俺一番な」

ごちゃごちゃと、うるさい……頭が妙に冷えていく。

雅紀の「しっかりしなさいお嬢様」なんて言葉が脳裏で再生される。

私は、上条A。

上条家の令嬢。

ただの女の子じゃ、ない…！

「ハッ…」

「ぐは…っ」

おなかの痛みがまだあるけれど、私は雅紀直伝の足蹴りを目の前の男に向かって繰り出した。

まさか反撃されるとは思ってなかったのか急所を的確に蹴られた男の身体が後ろへとぐらつく。

.