ガールミーツナイト《ars/j.m/0830》 (ページ42)

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Episode7 -2 ページ42

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つい小梅ちゃんを見返すと、上品に口元をゆったりと持ち上げる。

「やっぱり、そうなんですね、Aさん」

「ちょっとまって小梅ちゃん、なにが？」

こういう時の小梅ちゃんはなぜだか何でも知っているみたいな顔で笑う。

ふわふわの髪を揺らして、お姉さんみたいなふりをして。

「Aさん、叶わない初恋を忘れろとは言いませんが……もう気にしなくてもいいと思いますよ」

「なにを、」

「櫻井さんは聡明な方です。Aさんの気持ちにも気づいてらっしゃったと思います。それでも櫻井さんは、Aさんとの婚約を選択しています。Aさん、これがどういうことかお分かりですね」

「……何よ急に」

「言いたくなったんです」

「そんなの…」

分かっているに決まっている。

翔さんにとって私は、婚約を結ぶべき相手であるということだ。

その相手が自分に好意を持っていようが嫌っていようが、婚姻を結び、ビジネスパートナーとしての関係を成立させるべき相手。

だからこそ翔さんは、それを成したあの日から私をAさんと呼ぶようになり、敬語で話すようになったのだ。

あくまでパートナーであるために。

きっと翔さんのことだから、それがお互いのためだと考えてのことなのだろうと思う。

あの人は、そう言う人だ。

「わかっているんですよね」

「翔さんは、そういう人だもの」

「そうですね。櫻井さんは、誰よりも櫻井家の子息として正しい方だと思います」

私の初恋など叶うはずもないのだ。

最初から翔さんは、自分が好きな女の子を探すのではなく、自分が結婚するべき相手を探しているのだから。

私よりもずっと強く、そして厳しい人なのだ、自分自身に。

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