ガールミーツナイト《ars/j.m/0830》 (ページ39)

今日:4 hit、昨日:13 hit、合計:74,229 hit

Episode6 -7 ページ39

.

続けてチャットアプリを開いてそこからも私の名前を消す。

すべてを終えると、雅紀はにっこりと笑って二人にスマホを返却した。

「ありがとうございました。ご協力に感謝いたします」

「ちっ…」

「……まぁ、仕方ないか」

舌を打ち鳴らす潤くんと、ため息をつく和くん。

二人に向かって雅紀はさらに口を開く。

「お嬢様の顔が晴れたのあなた方のおかげなのでしょう。それは感謝いたします。今回のことも、これで不問といたしましょう。ですが」

ですが、その言葉をことさら強調すると、雅紀は二人の顔をまっすぐに冷たい目で見据えた。

「今後一切うちのお嬢様に近づかないことを約束していただきましょうか」

「まって雅紀、そんな勝手に、」

「お嬢様は黙っていてください」

「っ」

ビリッと空気が震えた。

雅紀は怒鳴ったわけではなかったけど、それよりも強い怒りが空気を振動させているのがわかって私は押し黙る。

「よろしいですね、お二人とも」

二人は三度顔を見合わせる。

そしてどちらからともなく視線をそらしてため息をつくと、同時に息のような声を出して頷いた。

「あぁ」

「わかりました」

雅紀の後ろから二人を見つめると、二人は私の視線に気づいてにこりと笑う。

「悪かったな、A。ピアノの練習も、お嬢様も、頑張れよ。無理はすんな」

「俺たちに騎士は荷が重かったかぁ…まぁやっぱ潤くんの言う通り浪士かな。ね、Aちゃん」

二人の言葉を聞いているだけで涙がこみ上げる。

だけど私が泣いてはいけない、そう思って、必死にその涙を飲み込んだ。

「じゃあ、俺たちは行くわ。さよなら、A」

「ばいばい、Aちゃん」

それぞれに手を振って二人が私に背を向ける。

「潤くん！和くん！」

その背中に向けて名前を呼ぶことしかできなくて。

そんな私の声に二人はそれぞれを片手だけをあげてひらひらとその手のひらを振った。

.