ガールミーツナイト《ars/j.m/0830》 (ページ37)

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Episode6 -5 ページ37

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絶対に電話が鳴りやまなくなるだろうと思って電源を切っていたスマホを立ち上げると途端に着信の画面に切り替わる。

相手はもちろん雅紀だ。

「……はあ」

「やっぱ平気じゃないっぽい？」

「平気じゃない、絶対」

五時にバイトを終えた潤くんと合流して二人が私を家まで送ってくれることになった……のだけど。

「俺たちが一緒にいたら火に油注ぐんじゃね？」

「そうかも」

「でもAちゃんをこの時間に一人で帰すのもなぁ」

商店街を歩きながら私は仕方なく通話ボタンを押す。

「もしも、」

『お嬢様！！』

「わ、そんな大きな声出さなくても聞こえてるよ」

『今どちらですか！私に黙っていなくなるなんてどういうつもりですか！』

「うるさいって、もう…一人になりたいって言ったでしょ」

『ピアノの先生はさっきまで待っていてくださったのですよ』

「……それは悪いと思ってる」

『とにかく、今すぐ迎えに、』

「もう帰ってるところだからいらない。じゃあね」

お嬢様とまだ私を呼ぶ声が聞こえていたけれど皆まで聞かずに私は通話を切る。

そしてそのまま電源を切って鞄の奥に押し込んだ。

「いいの？お嬢様」

「潤くんまでそう呼ぶの？」

「悪い悪い。なんか大変そうだからさ」

「そうね。帰ってからが大変そう」

「……Aちゃん、全然堪えてないね」

「そう？……うん、そうかも」

雅紀のお説教は憂鬱ではあるけど。

それよりも今はレッスンをさぼって飛び出した自由な街で潤くんのバイト姿を見れたことの方がよほど気持ちの多くを占めている。

午前中にあれほど鬱々としていた気分はだいぶなくなってしまっていた。

「私たぶん、二人に会いたかったの」

「なんだ。じゃあもっと誘うか」

「Aちゃんにそう思ってもらえてるとは、騎士冥利に尽きるね」

「だから浪士だろ。不逞浪士」

「ふふ」

二人のやり取りに笑みがこぼれる。

これから待っている雅紀のお説教も、二人のこんなやり取りを傍で感じられただけで乗り越えられるような気がしていた。

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