ガールミーツナイト《ars/j.m/0830》 (ページ32)

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Episode5 -6 ページ32

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そろそろパーティーのラストが近づいているようだ。

会場に戻らなければ。

「次に会えるのは何の機会でしょうね」

「わかりませんけど、たぶん近いうちに会えますよ」

私がそう返事をすると、翔さんはニコリと笑ってくれた。

「そうですね。俺がAさんを連れ出さないといけないから、なるべく同じ場所に居合わせたいところです」

「頼りにしてます」

「お二人とも、相変わらずですね」

雅紀が困り顔をしながら私たちの傍へとやってくる。

翔さんは雅紀に向けてふっと口元を和らげて見せた。

「変わりませんから。ね、Aさん」

「はい」

「それでは俺は先に戻ります」

音もなく歩き去っていく背中を見つめていると雅紀が時計を確認して私に声をかける。

「ではお嬢様も行きましょう」

「うん」

変わっていないつもりなのは、翔さんだけではないかと、私は思ってしまう。

櫻井家の庭で迷子の私を見つけてくれたあの日から、翔さんはいつも私の手を引いていろいろなところへ連れ出してくれた。

パーティーから抜け出して大人に怒られたり。

二人で護衛もなしに買い物に出かけて怒られたり。

幼馴染、とは少し違うけれど。

私たちは親戚同士のような、近しい距離感で育ってきた。

いつも私の相手をしてくれた翔さんのことが、幼い時から私は好きだった。

けれど。

「ねぇ雅紀、私たちって変わってない？」

翔さんが私と敬語で話す様になったのも、Aちゃんと呼ばなくなったのも、婚約が成立したその日からだ。

「……いいえ、少しだけ変わったかと」

「………そうよね」

ほら、私の初恋は叶いやしない。

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