ガールミーツナイト《ars/j.m/0830》 (ページ29)

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Episode5 -3 ページ29

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パーティーの終盤。

ダンスタイムが終わると翔さんはそのまま私の手を引いた。

「Aさん、抜け出しましょう」

いたずらっ子みたいな顔をして翔さんがパチンとウインクをする。

翔さんらしい仕草につい笑みが浮かぶ。

「はい」

頷けば優しく手を引かれて、私たちは会場を抜け出した。

廊下の端にある椅子までやってくると翔さんは手を離す。

「すみません、窮屈そうだったので」

「窮屈でした。ありがとうございます、翔さん」

「ふふ……変わらないですね」

「変わりませんね」

私たちは顔を見合わせて同時に笑う。

そう、変わらないのだ、昔から。

こうして翔さんが私の手を取って会場を抜け出してくれることも。

それがいつも私のためだということも。

翔さんが私の婚約者になったのはほんの三年ほど前のことだ。

けれど私と翔さんの出会いはもっと昔。

幼いころからパーティーに連れていかれていた私は大人たちのそんな集まりがつまらなくて仕方なかった。

知らない大人たちにかわるがわる頭を撫でられたり、わけの分からない話を黙って聞いていなきゃいけなかったり。

当時小学校に上がるころだった私は耐えられず会場から庭へと逃げだしたことがある。

一人で庭に出て、しばらく彷徨って、そして帰り道がわからなくなった。

今考えればあんなに広い庭を持っている櫻井家だったことが不運だったのだけど。

それが私と翔さんの出会いにつながった。

「お姫様、やっとみつけた」

「……おにいちゃん、だぁれ…？」

泣きつかれて座り込んでいた私を見つけてくれたのは、少し年上のお兄さんで。

月明かりに照らされていたのは絵本で見る王子様のような男の子の顔だった。

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