【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【3】

148ねむ ページ49

泣き続けて、泣き腫らして、エドにホットタオルをもらって目元にあてる。気が済むまで泣いたのにまだ一滴ずつ滲む涙が鬱陶しくて、全部タオルに吸わせておいた。

「お前、今は一人部屋なのか」
「え、あ、うん。生徒会と風紀委員は一人部屋が許されてるみたい」
「へぇ」

短い相槌を打って、エドが自分の膝の上に肘をつき、明後日の方向を見つめる。何かを言うべきか悩んでいるようで、しばらくそのまま1分間ほどの静寂が流れた。

「お前がいると、随分騒がしかったんだなって実感した」
「い、一緒に住んでてうるさかったってこと！？」
「悪いほうに捉えんな、ニュアンスとしては逆だ」

ようやくこちらに顔を向けたエドは、呆れを滲ませた表情だ。
ニュアンスとしては逆……悪いほうに捉えない？ と、いうことは、だ。

「……私がいないと、静か？」
「……慣れなすぎて、テレビつけたくらいにはな」

手に持っていた今やあまりホットではないタオルが、ぼとりと手から滑り落ちてベッドに落ちる。
また明後日の方向を見てしまったエドの耳は、ほんのり赤い。照れているんだっていうことは、わかりきっていた。

「わ、私ッ……元の部屋に戻るぅ……」
「いや無理だろ、っておい鼻血！！」

ボタボタと鼻から垂れてくる鼻血を左手で抑えていると、エドが慌ててティッシュを大量に渡してきた。よかった、手でおさえていたからベッドを血で汚すことは避けられた。

「さっき鼻でもぶつけたか？」
「いや、これは持病のほうかな……心配しないで、しょうもないことだから」
「お、おう……」

手慣れた手つきで止血する私を見て、まぁいつものことなのだろうと納得したエドはそれでも心配そうに私を見ながら再び椅子に腰をおろす。
血で汚したティッシュをそばにあったゴミ箱にぽーいとまとめて捨てて、私はベッドの上で居住まいを直した。

「私も、同じこと思ってたんだよね。今の部屋は特に大きいのもあって、すっごく静かで、家に帰ると寂しくてさぁ。エドもこっちに引っ越すのってできないかな？」
「生徒会フロア云々の前に、そもそも異性が同じ部屋に住むのは問題だろうが……」
「えー、でも今更な感じしない？ 今までエド私のこと気づかなかったわけだしさ」
「……お前の一人称、慣れねぇな」

自分の膝の上で頬杖をついた体制のまま、エドはぽつりと零す。

「俺のほうがいいなら戻すよ？」
「いや、いい。俺の前ではそっちでいろ」

私の提案を、エドはばっさりと切り捨てた。

149ねむ→←147ねむ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す