133ねむ ページ34
「……ひとり、練習」
ぽつり、と繰り返すようにリデルは繰り返す。
そんな彼を見ながら、今更だけど罪悪感というか後悔というか、言い知れぬ感情を覚える。
実際彼がどういう過去を歩んで今の喋り方にたどり着いたかわからない。わからないのに、軽々しくアドバイスなんて口にしてよかっただろうか。
逆に負担になって、悪い方向に彼を送ることにならないだろうか。やっぱり今からでも撤回したほうがいいだろうか。
そう思って開きかけた私の口から、「やっぱりリデルの好きに生きなよ」という言葉が出ることはなかった。
目を輝かせるリデルを見てしまったから。
「……わかった。……俺、Aと……練習。……したい」
「え、私と?」
こくり、とうなずいてから、再び言葉を探すリデル。
「……俺、……だけど、俺、すごく……喋るの遅い……遅くなる。それでも、いい……?」
必死に単語だけではなく一文章で喋るリデルを見て、なぜか私は自分のことのように嬉しくなってしまって、頬いっぱいに笑顔を広げて大きくうなずいた。
そんなの、当たり前だ。
「もちろん! もちろん待つ。何分でも待つから、そうやって全文喋る練習を私としよう! すごい、すごいよリデル!」
思わず席を立って喜びを表す私に、リデルは「ぁ、」と小さく声をあげてから、私の感情を鏡で映したかのようにうれしそうに頬を綻ばせてくれた。
「……うん、頑張る」
「うん! 頑張ろう!」
でも無理しなくていいからね。急ぎの用事とかは単語で大丈夫だよ、って念を押せば、リデルはこくりとうなずいた。
そんなさなか、ピンポーン、と部屋の呼び鈴が鳴る。
ふ、と顔をあげた私より早く、リデルはさっさと立ち上がりドアを開けようとする。
「え、だれか確認しなくていいの!?」
「呼び鈴……このフロア、役員だけ……」
あ、そうか。
このフロアには生徒会や風紀委員しかアクセスできないから、呼び鈴を押したってことは、関係者のだれかだ。
それでも一応確認したほうが良いとは思うが、そう言える前にリデルはドアを開けてしまった。
「あ、A、やっほ」
「アルくん!」
「リデルの部屋にいたんだね。引っ越してきたって聞いて、ちょっと挨拶行こうと思ったのに何度呼び鈴押しても誰も出ないんだもん」
「え、ごめん! っていうか、連絡くれればよかったのに」
「それはそう」
からから、と笑いながら、アル君はリデルに招かれる前に靴を脱ぎ、部屋の中へと入ってくる。そういう仲なのだろう。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あぅ。さん» ウワーコメントくださることが一番嬉しいです!!本当にありがとうございます!!励みにさせていただきます、更新頑張ります!! (2022年6月13日 22時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
あぅ。(プロフ) - 始まりの神:トワイライト・ジェネシスさん» 更新嬉しすぎますー!!!!!これからも頑張ってください!!!!応援してます!!(●︎´▽︎`●︎) (2022年6月13日 21時) (レス) @page43 id: 0ffcc11942 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - todddさん» 私がtoddd様を大好きだが!!??今でも読んでくださってくれて本当に本当になんと申し上げたらよいか…ありがとうございます…!また更新頻度低くなっておりすみません。6月中はちょいちょい上げていきますー! (2022年6月12日 1時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
toddd(プロフ) - 更新お疲れ様です!最近更新頻度高くて超歓喜です…😇久しぶりにエド出てきて飛び跳ねました!これからも更新楽しみにしています!だいすきだー!!! (2022年1月14日 22時) (レス) id: f42c81b12e (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 茶茶さん» ほんっっっっっと亀更新ですみません!にもかかわらず待ってくれてありがとうございます!!!!嬉しい!!!茶茶さんも体にお気をつけて!!!!!期待に応えられる作品を頑張ってカタカタします!!!!嬉しい!!!!!!!!!ありがとうございますうううう!!! (2021年2月27日 20時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年8月7日 16時