【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【3】

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鋭い鉤爪、それが一直線に私に向かってくる。そんなワイバーンの腕に、ファフニールは思い切り噛みついた。
ドラゴン同士の争いは、人間同士のそれとはレベルが違う。風圧だけで吹き飛ばされそうな自分の体を、踏ん張ることでなんとかその場に留める。

「……なんて光景だ……」

呆けたような声で、ヴァーノンさんは目の前の光景を噛み砕こうとしている。
ふ、と私は苦笑を浮かべながら、彼に話しかけた。

「今目の前の光景を刻みつけたほうがいいですよ。今世紀で、ドラゴン同士の争いなんてあまり見れません」

ドラゴン種のレアさからしてお察しだろうけど、まず数がとんでもなく少ない。
そして仲間意識が強い。縄張り争いをしていないときは、お互いの場所を尊重しつつ、相手のスペースには踏み入れない。距離の測り方を理解しているのだ。

「くそっ……こんなはずじゃなかったのに！ お前を倒して、会長サマの強さを……」
「まだそんなこと言ってるんですか、意中の会長にまで否定されてどこまで幻想に夢抱けるんですか！？」
「……煩い、僕は、会長の……役に、立たなきゃいけないんだッ……！」

もうここまで来たら私が何を言おうと、火に油を注ぐだけだろう。何より、私にはこいつの気持ちは理解できない。だから彼を落ち着かせられる言葉は出てこない。
しょうがないでしょ、本当に何もかも理解できないんだから。

こうなったら会長に何かを言ってもらうことが理想なんだろうけど、あの会長の口から労わる言葉が出てくるわけない。生徒会補佐として頑張ってる私を労ってもらった試しすらないのだ。はぁ嫌だ嫌だ。

「そもそも全部会長のせいなのでは……？」
「あぁ！？ クソ庶務後で覚えてろ！」
「ふぁ？ なんでこの轟音の中聞こえたんですか！？」

やば、あとで全力で逃げよう。
この場面を無事に逃げ切ったらだけど。

ドラゴン同士の戦いは互角。お互い噛みつき合い、傷つけあい、そしてまた争い合う。
私の大事なファフニールが傷つくのは、正直見てられない。
突破口が見つからない。流石に、ドラゴンを召喚しつつ二体目を召喚する余裕はない。っていうか、ドラゴンを召喚するだけで、たとえ赤である私でも、魔力が底を尽きるのだ。

少しだけでも、親衛隊くんを我に返す方法。
あまり上品ではないけど、

一つだけ。

「ファフニール、下がれ！」

びくり、とファフニールが後ろに数歩下がる。
空いた場所を埋めるように、私は前に出て、両腕を広げた。

「A……！？」

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