【逆ハー注意】男装腐女子の魔法科男子校潜入記【2】

63ねむ ページ14

「悪ぃなぁ、恨むなら自分を恨めよ」
「その女顔をぼこぼこにするのは俺らも心苦しいんだぜぇ？」

ゆったりと焦らすように歩み寄ってくる男たちはガニ股でいかにも品がないことを隠そうともしない。
この学園の中のトップたちに囲まれてここ数日生活していたものだから、あぁ、こんなに下品なものだったのかと思わず顔をしかめてしまう。いや、他人のふり見て自分のふり直せっていうからなぁ。私はちゃんと上品に動けているだろうか。
あのエドでさえ、育ちの良さを隠しもしないくらい上品に振舞っているのに。不良のクセに。そのギャップがまた良し。

「ビビッて言葉も出ないってかぁ？」
「はははっ、まぁとりあえず一発お見舞いしてやるよ！」

そういって手を振りかざした男。口の中でもごもごと詠唱がされて、その魔法が何なのかわからないが確かに彼の右手は光を放っている。強化魔法の類だろうか、あれにぶたれたらすごく痛いのだろう。
ぶたれるつもりはないけど。

ひゅ、と私と男の間に小さい影が動く。
びくり、と肩を震わした男は反射的にその拳を私ではなくその影に向けてしまう。その影を彼の拳が掠めた、その刹那、

「なっ……！？」

黒い影がまるで液体状のようにどぷりとその男の拳を飲み込んだ。意識を持つようにその影は拳から次は腕、そして体へとその影を伸ばしていきやがては全身を飲み込もうとしていく。
悪夢のような景色に、その場にいる全員が顔を青ざめさせた。

「なんだ、これ、ひっ、いやだ……！」
「あぁ、この箱は会長の防御魔法か」

先ほど投げたのはエドがくれた木箱。その木箱に生徒会役員たちの様々な防御魔法がかかっていることを私はしっかり覚えていたのだ。魔法が木箱に干渉した途端に発動する、防御魔法が。

「た、たすけっ……！」

助けを求める腕すらもごぷりと音を立てて影は飲み込み、そして影ごと溶けて消えた。
流石暗黒騎士、残酷なことをしてのける。

「多分風紀委員のもとに送られたんだと思いますよ、違反行為をしたものとして」

喋りながら後ろの壁に人差し指でさっと円を描き、ノックした。

「グリフォン、俺を守れ」

光り輝く円の中から鷲とライオンの体を持つグリフォンがのそりと現れ、ぎろりとその場にいる全員をねめつける。

「これでも役員に足る魔力(ちから)くらいは持ってるんですよ」

そのくちばしをそっと撫でて、俺は振り返り彼らを見る。

「争ってみますか？ グリフォンは野蛮なのできっと楽しめると思います」

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