男装腐女子の魔法科男子校潜入記

37ねむ ページ38

びりびりと痛む親指と中指をさすりながら、私は席を立つ。次は移動授業だ。

「エド、次の授業魔増って書いてるけどなにこれ？」
「魔力増幅、まぁ平たく言えば魔力を今のより一ランク上にあげましょうとかいうやつだ」
「えぇ……俺これ以上魔力いらないんだけど……」
「あぁ、赤だもんな」
「エドも赤でしょ？ もう十分じゃない？」
「いや、灰色目指してる」

ほお、と感嘆の声をあげる。外見はどう見ても不良なのに、エドはどう見ても不良ではなくまじめな生徒だ。かなり強いポテンシャルを持ってるし、それに満足せずにひたすら先を求めている。
私がいうのもだけど、高校一年生で赤レベルの魔力を持っているのはかなりすごいことだ。会長と副会長は黒と灰だけど、会長はあと数年もすれば教科書に載るし副会長も世界で数えたら両手で余るか余らないかくらいの数の人間のうちの一人だ。あの二人が異常なだけで、灰より一ランク下な赤は普通のベクトルで考えてもかなりすごいステータスなのだ。

「メイジは魔力が多ければ多いほどいいもんねぇ」
「まぁ、そうだな。上級魔法も同時詠唱も、魔力がねぇとはじまらねぇし」

召喚士は魔力量よりもどれだけの召喚獣と契約できるかが重要となる。何度も言うようだけれど、門を開くことにしか魔力を使わないので魔力がどうしたって余ってしまう。
なので魔力が少ない女性は大概召喚士なのだ。無ジョブだっているけど。
それは召喚士が異例なだけで、そのほかのジョブのほぼすべてが魔力量によって強弱の差をつけられる。メイジ、魔法使いは言わずもがな、剣士だって武器に魔力付加をすることで強くなれる。

「はぁ、いいなぁ！ 強いか弱いかがデータ化できるから、自分がどこにいるのかわかりやすいよな」
「お前は召喚士としては強いほうなのかよ？」
「どうだろー、たぶん強いんじゃない？」

話している間にも、いつの間にか魔増専用の教室についたようだった。室名札に「魔増」って書いてあるし。
部屋の中を覗くと、この間の魔石がいくつもテーブルの上に置いてある。

「魔増かぁ……そんな授業初めて知ったなぁ」
「ひたすら魔力を魔石に流し続ける忍耐力が試されるくそな授業だ」
「は？」

だからクラスメートのみんなこんなにだるそうな顔してたのか。
ちなみに魔力を流し続けるということは、まぁわかりやすく言うなら授業時間である一時間、ずっとマラソンしているようなものだ。

「た、楽しみー……」
「灰色まで伸ばす」

前向きかよ。

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