男装腐女子の魔法科男子校潜入記

20ねむ ページ21

「おっ、オオカミくん！」
「げっ…………末明……」
「うん、その「げっ」っていう声を隠そうともしない堂々としたその立ち振る舞い俺はオオカミくんのことを誇りに思っているよ」
「お前、テストは終わったのかよ」
「うんまぁね、オオカミくんも終わったんでしょ？」

二人で並んで寮部屋へ帰る。今思ったけど、オオカミくんって警戒心解くの早いね。昨日まで半径一メートルくらい近寄らせてくれなかったのに一晩で何が起きたというのか。
まぁそれでも受け答えは一言二言で、物理的距離が近づいても精神的距離は遠いままだ。細かいこともあまり知らないし、まだ知り合い以上友達未満といったところかな。オラ頑張る！

「オオカミくんは職業メイジだっけ？」
「……あぁ」
「それっぽいよなぁ、魔力値も赤だし。 首尾は上々？」
「……まぁな」
「メイジになりたかったの？」
「……別に」

ほら言ったでしょ。精神的距離はまだ遠いままだって。ガードかったいなーくそ。

「……お前はどうなんだよ」
「俺？俺はサモナーだよ。 召喚士」
「……それで魔力値赤か」
「うーん、この学園にきてそれいわれるの最早何度目だろうか」

そろそろ傷つくよ。召喚士やっててもいいじゃない。人権あるじゃない。人の自由じゃない。

「……なんか理由でもあんのか」
「えー、オオカミくんが教えてくれたら俺も話すー」

にし、と歯を見せて笑えば、反対にオオカミくんは眉根を寄せる。
しばらく黙って二人並んで廊下を歩くこと数分、オオカミくんが導き出した結果は……

「……じゃあいい、別に取り立ててお前に興味があるわけでもねーし」
「あっは！俺今傷ついた！」
「うっるせーな」

そんな感じで会話は終わってしまい、俺らは残りの帰路を黙って歩いた。不思議と気まずさはなかったけど、もうちょっと距離を縮めたかったなと赤い絨毯を踏みしめながら思った。あまりあわてる必要もないけど、これから一年間寮部屋をともにするルームメイトじゃん？
オオカミくんが慣れた手つきで扉を開けて、さっさと中に入っていく。靴を脱ぎ捨てたと思ったらまっすぐに自室に閉じこもってしまった。
そんな彼の後姿を見て、俺は苦笑をしつつ脱ぎ捨てた靴をそろえておく。
壁に飾ってある時計を見れば、生徒会へ行くのにあと二時間も猶予がある。少しだけ眠っておこう、と俺はソファーに体を預けた。ベッドに入ってしまうと熟睡するタチなんだよね。ソファーなら時間通り起きれそう。

「じゃ、おやすみなさーい」

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