16ねむ ページ17
ついに時刻は七時をきざみ、壁掛け時計が音色を鳴らす。
珈琲によって増幅された集中力はまるで糸を切られたようにそこで途切れ、はっと私は資料から顔をあげた。見れば、周りの生徒会役員は各々パソコンを閉じたり書類を机の表面で叩き整えたりと帰り支度をしている。
「Aお疲れ様。 生徒会の仕事はイベントを間近に控えていない限りは毎日七時までだよー」
「へぇ、そうなんだ。 アルくん教えてくれてありがと」
「いーえ」
へにゃりと人好きのする笑みを浮かべて席を立ち伸びをするアルくん。道端でこんな笑い方と容姿の人にナンパされたら私は絶対についていくね。
流石に疲れたな、と私も座ったまま腕を伸ばす。
生徒会補佐は生徒たちに任命された役目ではないため、難しい仕事は与えられない。そういう権利は生徒たちに任命されてから与えられるものだという考えだろう。
だから仕事自体はそこまで大変ではなかったけどいかんせん、量が半端ではない。ここまで集中したのは久しぶりだ。
「ではA、明日からもよろしくお願いしますね」
「また明日ねー!」
「アルくん、ヴァーノンさん、お疲れ様です」
そそくさと帰り支度をし生徒会室を後にしていく面々にならい、私もゆっくりと持ち帰り可能の書類を鞄に詰めていった。
まだ一学期が始まって二週間で授業もまともに始まっていないため宿題はほぼゼロだし、部屋でもいくつか片付けておこうと思ったのだ。
「……あの……」
そんな私の隣に立つのは、2m届きそうな巨神……あ、いや、書記のアーチーさん。
「アーチーさん、どうかしました?」
「…………リデル、でいい……そっちの、が、呼ばれ慣れてる……。 同い年……呼び捨て……がいい」
確かにそっちの方が名前っぽいもんな。苗字なんだよね、リデルって。
「俺……A……でもいい……?」
「……?……あ、呼び方の話です?」
こくり、と頷くリデル。
述語が欠けてる、述語が。
「はい、もちろんいいですよ。 よろしくね、リデル」
「……敬語……要らない……」
「そう?なら遠慮なく」
明らかに普通じゃない彼の喋り方に対して驚かないのには、まぁやっぱり王道学園の設定を知り尽くしてるからに限るよね。書記は寡黙キャラ。侍口調なのもいれば、彼みたいにワンコキャラなのもいる。
でも実際に複雑な家庭に育ったゆえの喋り方なので、流石にふざけた発言はできない。ちゃんと弁えるよ、私。
「じゃあリデル、また明日ね」
「……うん!」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 礼羅さん» きゃーありがとうございます!生きる糧なんて嬉しい!ゆっくりですが更新頑張ります。これからどんどんキャラ増やすのでどんどん推しが増えますように! (2018年7月18日 10時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ウィワクシアさん» ショートだったのですね……主人公にはない魅力です……! (2018年7月18日 10時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ほたるいかさん» えぇえぇええ嬉しい!ゆっくりになりますが更新頑張ります! (2018年7月18日 10時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
礼羅(プロフ) - 毎話楽しみにしています。本当に素晴らしい作品で、もう生きる糧の一つのようなものです!更新待ってます! ちなみに私の推しは主人公とエドです (2018年6月20日 18時) (レス) id: f42c81b12e (このIDを非表示/違反報告)
ウィワクシア(プロフ) - これ読んでたら高校時代スラックスで通って「どっちですか」って聞かれまくったの思い出した (2018年5月22日 19時) (レス) id: 4474fbdae4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:始まりの神 | 作者ホームページ:
作成日時:2015年8月6日 13時