1本の傘を君と

8月：夜空に咲く花、貴方の選択／sgi ページ12

＊side：sgi＊

「おっきいのとちっちゃいのどっちがいい？」

「なにそれ舌切り雀？」


思わず質問に質問で返してしまった。いや唐突すぎない？

「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。」

「Aのオススメは？」

「ちっちゃいほう。」

「ならおっきいほうで。」

「は、絶許」


そう言いつつ立ち上がりキッチンに向かうA。

「日頃の行いが宜しくないのよ」

軽くおどけながら伝えると

「あら、日頃の行いが良すぎて嫉妬されちゃったかしら」

と返ってくる。

口が減らないやつだ。
でも、だからこそちょっとしたやり取りが楽しいと思える。


キッチンからは何かを切る音が聞こえていたが、SNSをチェックしている間に音は止んでいた。

「はーいおっきいほうですよ〜」

そう言ってAはスイカがのせられた大皿をテーブルに置いた。

「スイカじゃん！美味そ！」

「切るの面倒だからちっちゃいほうオススメしたのに」

「いや知らなかったからさ！食ってい？」

「どーぞ」


手を合わせてから豪快にスイカにかぶりついた。
久々のスイカは美味い。

「そろそろ時間ね」

何が、と聞く前に答えは分かった。
夜空を斬り裂く爆音。不自然に明るい空。

「花火大会か。」

「ここからでも見えるのよ。クーラーの効いた部屋で見る花火もなかなか乙なものでしょう？」


そう言って妖しく笑うA。
生憎彼女の顔を照らすのは何の変哲もない蛍光灯だが、それでも一等綺麗だ。


「そういやおっきいほうはスイカだったけどちっちゃいほうは何だったの」

「キウイフルーツ。」

「なんでまたキウイフルーツ？」

「ひょうきんな貴方にぴったりかなと思って」

「褒められてる気がしないしキウイフルーツとひょうきんも結びつかない」

「あらそれは残念。……ちなみにスイカはかさばったものって意味ね。ある意味こっちも貴方にお似合いかもね？」


意味があるのか……と考えるけれど分からんもんは分からん。
うんうん唸ってる俺を見てAはケラケラと笑った。

「キウイフルーツの花言葉は生命力、豊富、ひょうきん。エネルギーに満ち溢れていて、明るくひょうきんで、知識も勉強意欲もずば抜けてる貴方にピッタリでしょう？」

「……そーれはちょっと心臓に悪いですよ」

「日頃の行いがとかなんとか言うからじゃない」


してやったりな笑みを浮かべるA。
一生Aには敵わない気がするなあ。


胸の鼓動が早くなるのを感じつつ、今日何発目かの花火に目を向けた。






キウイフルーツの花言葉────生命力，豊富，ひょうきん────

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