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無事医務室につき、Aが看病をされていたわけ…ではなく。
『…バカでしょ、自分の怪我の具合とかぐらいわかっとけ』
「うるせえな」
『ほら、こことか痛そう』
彼女が指したのは、赤黒い血が滲み出ているある箇所。
眉を寄せてそれをみるAを視界に収めて、銀時は彼女に問いかけた。
「あー…お前さ、やっぱそういうことすんの?吉原だし」
『そういうことって何?殺し?』
「殺しじゃねえよ!だからその…まあ…『わかるよわかるよ』
包帯を巻き終えた彼女は、改めて銀時の目を見る。なんだか死んだ魚みたいな目をしているな、なんて言う感想は怒られそうなのでやめておく。
『まあ、しなくもないよ。ここはそういうとこだしね』
「…そ、」
『でもほとんどしない。数えるぐらいかな、殺しも数えるぐらい』
「…お前さっきからそれなんなの?“殺し“って」
まさかこの牢獄の中で殺しなんてできるわけがないだろう。鳳仙の目もあるし、他の女たちの目もある。
『1回か2回だよ…お客がまあ、そういう人でね」
「そういう?」
『幕府の中央の…あとは察してよ』
銀時が察するのは簡単なことだった。攘夷戦争で戦った相手のような、そういう存在。
闇に包まれた、“幕府中央部“だろう。高杉が憎んでいたりするのかもしれない、そう言う相手。
『それは初期の方だったんだけど、それで遊女辞めさせられちゃって』
「それで降格、か」
『降格言うなよてめえ、適した所に行ったって言ってくれない?』
「すいませんねAチャン」
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作者名:なんなん | 作成日時:2021年4月30日 17時