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「それとも…母を求める童の姿を見て、遠き日でも思い出したか?病の母親を捨ててきたお前が、罪滅ぼしでもする気になったか?」
「何を世迷事を…」
不敵に笑う鳳仙に対し、神威は通常のニコッと笑った顔を崩さずにそう呟いた。
「夜王を腑抜けにした女、一体どれ程の女かと思えば…ボロ雑巾に縋るただの惨めな女とは。吉原の太陽が聞いて呆れる」
少しだけ、Aの纏う雰囲気が殺伐としたものに変化した気がした。
求めている強さはこんな物ではない、と呟く神威に、銀時は語りかける。
「妹だろうが親父だろうが構わずぶっ殺す、そういうやつかい?皮肉じゃねえか、実の妹を殺そうとする兄貴もいりゃ、血は繋がっていなくとも親子より強い絆で繋がってる連中もいる」
話ぶりからして神威は彼の妹まで殺そうとしたのか。
第七師団団長周辺の情報は出てきにくいため、先程の神威の父親が星海坊主だったこともAは初耳である。
どっちが本物の家族かなんてわかりゃしねえがな、という銀時の横で、Aはじっと神威を見つめていた。
…と、その時Aがピクリと何かに反応する。
「面白いではないか。その絆とやらの強さ…見せてもらおうではないか!」
神威が座っているオブジェに鳳仙は移動している。
これから始まるであろう戦闘を、もう何年も夜王を見てきたAが察知しないわけがなかった。
「貴様がわしの鎖から解き放てるか…わしがヤツらの絆を断ち切れるか。勝負と行こうではないか!」
鳳仙は巨大な番傘を、銀時は木刀を。それぞれ同時に抜き取り、一気に場の雰囲気が変わる。
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作者名:なんなん | 作成日時:2021年4月30日 17時