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彼は日輪に今までの無知だった自分を謝り、そして小さな体で体当たりをして扉を開けようとする。
「今度はおいらがここから…母ちゃんを救い出す!今度は、おいらが母ちゃんを守る!もうこんな所に絶対に置いて行ったりしない!今度こそここから出るんだ、親子で一緒に上に行くんだ!」
”母ちゃん”と何回も呼んで、体当たりして。
中にいる日輪はどんな表情をしているのだろうか。
「やめとくれ!あんたの母ちゃんなんてここにはいない、そういってんだろ」
「か…母ちゃん…『晴太』
「そんなことあるまい」
威厳のある声が後ろから聞こえ、晴太はハッとして後ろを振り返る。
視界は紺色の着物でいっぱいになっていた。
「…A姐、」
「そんなに会いたくば会わせてやろう、このわしが」
「ほ…鳳仙!」
「あちゃ〜、見つかっちった」
『意外と早かったね』
見えたのは夜王鳳仙。晴太の前にはAと神威が立っていた。
「…久方ぶりだな、青薔薇」
『ええ、お久しぶりです。その様子だと勝っても負けてもないみたいですね、さっきの戦い。残念』
支配者と被支配者の間で発せられるとは思えないほど、殺伐とした重苦しい雰囲気。
晴太は息をのみ、神威はというとニコニコ笑っていた。
Aの謀反を知った鳳仙は表情を変えることなく晴太に話しかける。
「…連れていくなら連れていけ。童、それがお前の母親だ」
投げ出されたのは束になった綺麗な髪。
それが切り取られているということは、いい意味ではない。
「お前の母親は日輪ではない、とうの昔にこの世におらんわ」
「何を…言ってるんだ?」
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作者名:なんなん | 作成日時:2021年4月30日 17時