56，俺達の問題 ページ8
私から視線を外し、闇ノアさんは続ける。
「黒神ぃ…お前に期待した俺が馬鹿だったよ。やっぱりお前も光が好きなんだな」
お腹を圧迫されながらも、黒神君は小さな声で言った。
「別ニ…悪くないでショ…」
「確かに、悪くはないかな。目障りなだけで」
微笑んだままの闇ノアさんに、ぺいんとさんが震える声で問った。
「アンタ…何が目的なんだよ…」
尋ねてきた奴が無傷だったのが癪に触ったのか、闇ノアさんは答えずにまた指先を動かした。
指示に従い、脚は迷いなくぺいんとさんの首に巻き付く。
「あっ！」
思わず、悲鳴とも取れる声を上げてしまった。
脚は首に何重にも絡み付き、絞めながらヒョイと体を持ち上げる。
「あ゛…ッ！」
今度はダークさんが「ぺいんと！」と高く叫んだ。
タコはぺいんとさんの首を離すこともなく、じっと主の指示を待っている。
その顔はさっきの穏やかなものとは違い、むしろ何の感情もないように見えた。
「闇ノア！ 止めろ！」
クロノアさんが叫ぶと同時に、闇ノアさんの指先が下を向いた。
私の時より乱暴に、近くの地面にぺいんとさんを叩き付ける。
「う゛ッ」
体が硬い地とぶつかる生々しい籠った音が、嫌でも耳に入った。
「ぺいんと…だっけ。ありがとう、ようやく本題に入れるよ」
感謝しているとは思えない蔑んだ目を細め、クロノアさんを見る。
「クロノア。俺もお前と決着をつけないとって思ってたんだ…いや、決着なんて言い方変だな」
クロノアさんは動かないまま、静かに睨んだ。
「…それは俺達の問題だろ。こいつらを巻き込むな」
「ずいぶん言うようになったな」
楽しそうに笑った闇ノアさんが、さらに目を細めた。
「でも俺はそうは思わない。お前が仲間を得た時点で、もう"2人の問題"じゃなくなった」
「…どういう意味だ」
「わかんないならいいよ」
パチンと指を鳴らした瞬間、私とみんなとの間に黒い風の壁が出現した。
私と闇ノアさんだけを囲うように、円状に広がった壁。
「クロノア。人質としてこの子を連れて行くよ。返してほしかったら3日後、またここに来て」
人質という言葉が理解できず顔を上げた瞬間、視界が完全に真っ黒になった。
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作者名：KoToNe_0412 | 作成日時：2021年11月7日 10時
