52，標的 ページ4
シュー、シューと呼吸の音がする。
するとタコは、微かに後退ったクロノアさんに目を向けた。
真っ赤で吸盤の付いた脚を振り、一気にクロノアさんに襲いかかる。
ギリギリ脚を交わし、クロノアさんは私達に叫んだ。
「早く戻れ！」
我に返った4人が、後ろのゲートに向かって走る。
私もタコの脚を避けながら走り、ふと振り返った。
タコは私達には目もくれず、執拗にクロノアさんを追いかけ回している。
幸い動きが遅いから避けられているけど、なぜクロノアさんだけなんだろう。
一番初めに動いたから…？
脚を避けながら、クロノアさんもこちらに走って来る。
私達はゲートのすぐ傍で、クロノアさんを待っていた。
あと少しで手が届く。その瞬間に、クロノアさんの体が沈んだ。
転んだと思ったら、違う。足に何かが巻き付いている。
引きずられる直前に腕を掴み、互いに引っ張り合った。
私達が押さえ、ダークさんが脚を切り落とす。
ギャアアアとタコらしくない悲鳴が甲高く響いた。
「ダーク！」
ぺいんとさんの声に振り返ると、今度はダークさんが標的にされていた。
本人も、舌打ち混じりに剣を振るい始める。
「このままじゃ埒が明かない…俺も戦う」
「クロノアさん…僕も行きますよ」
剣と弓矢を片手に、2人は頷き合った。
私も、黙って見ている訳にはいかない。死神君と黒神君も同じようだった。
遠距離の攻撃が得策だと回りを見渡す。
その瞬間、低い呻き声と籠った音が耳に入った。
「ぅぐっ…！」
脇腹に脚が直撃したのだろう。
ダークさんが、真横に飛ばされる。その先に、地面はなかった。
「ダークッ！」
ぺいんとさんや死神君の高い悲鳴を聞きながら、私の足は動いていた。
ダークさんも落ちると悟ったのか、黒い羽を大きく広げて動かす。
でも言っていた通り、重力が強いせいか浮けていなかった。
崖の端で足を止め、落ちていくダークさんに手を伸ばす。
向こうも咄嗟に片手を伸ばし、私の手を掴んだ。
重みでズンと体が沈み、私も崖下へ引きずり込まれる。
何とか耐え、駆け付けてくれた死神君達とダークさんを引き上げた。
冷や汗を拭い、興奮した様子のタコに目を向ける。
どうしたら…この状況を打破できる…！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：KoToNe_0412 | 作成日時：2021年11月7日 10時
