51，爆音の正体 ページ3
ダークさんの言葉に一瞬頭が真っ白になるも、すぐ口を開いた。
「えっ、でも、声…」
ツカツカとこちらに来たダークさんは、私からピッケルを奪い取ると壁を壊し始めた。
薄い壁はすぐに崩れ、向こう側が見える。
そこに、人影はなかった。
「あれ…クロノアさん…？」
「"クロノアじゃない"誰かがいたんだろ」
あまりにもさっぱりと言われたものだから、つい聞き逃すところだった。
「でも声は確かに…」
じっと壁の向こうを睨み付けていたダークさんが、低く呟いた。
「今すぐ元の世界に戻るぞ」
「う、うん…」
戸惑いが恐怖に、脂汗が冷や汗に変わり、私はダークさんのすぐ後ろに付いて行った。
ぺいんとさん達は、普段と変わらない様子で採掘と休憩を繰り返している。
「ん、ダークと琴音さんお帰り〜」
死神君の隣には、ぽかんとした表情のクロノアさんがいた。
やっぱり、と静かに目線をダークさんに向ける。
「…戻るぞ、お前ら」
「え、はい。ちょうどそう話してましたから…」
「…ダーク、何か変」
ネザーゲートへ向かう一同を見ながら、私はクロノアさんを呼び止めた。
「あの、クロノアさん。さっき…」
壁越しに話したことを伝えると、クロノアさんも怪訝そうな顔をした。
「俺、そっちには行ってないし、そんなこと話した覚えもないけど…」
「何だったんでしょう…声は確かにクロノアさんでしたから」
眉間にシワを寄せたクロノアさんも、深刻そうな表情で「早く戻ろう」と呟いた。
小走りでゲートまで向かう途中、足元に違和感を覚えて足を止めた。
揺れている。小刻みだった揺れが、どんどん大きくなっていく。
顔を上げると、揺れている事実に戸惑うみんなと目が合った。
「こ、これは…？」
揺れと同時に、地中からゴゴゴゴと野太い音が聞こえてくる。
何かがおかしい。そう思った瞬間、突如視界に得体の知れないモノが入り込んできた。
赤黒い、巨大な棒のような壁のようなモノ。
地面が割れ、中からその正体が姿を現した。
太い棒を脚のように使い、その大きな胴体を地上に這い上がらせる。
「た…タコだ…」
こんな所にいるはずない巨大な"タコ"が、私達を見つめていた。
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作者名：KoToNe_0412 | 作成日時：2021年11月7日 10時
