Ep.27 -彼の花と記憶- ページ33
A目線
『…買ってしまった。』
そうぽつりと呟きながら、
ゆっくりとした速度で
ジグラットへの道を歩く。
空は清々しい晴天のまま。
ゆったりとした速度で
白い雲が流れていく。
乾いた風も、
俺の肌を優しく撫でた。
俺の手の中で、
その風に吹かれているのは
…先程、あの花屋で買った花。
名を
「スミレ(菫)」と言うらしい。
美しい紫色をした、凛として咲く花だ。
そこまで考えて、
俺は衝撃の事実を忘れていた事に気付き
街中なのも憚らず声を上げた。
『あｯ、やべぇ！
花言葉をあの婆さんに聞くの忘れてた！』
周りのウルク民の視線が
一斉に此方を向いた気がしたが
気にしないで置こう。
花を贈る際の注意事項くらいは
流石の俺でも知っている。
花言葉もまた
注意しなくてはならないのも。
紫色の花には、高貴な意味も多いが
悲しい意味も多い。
"贈り物には余り適さない"
…と、言われてしまうくらいだ。
そこまで考え、
俺は頭をがしがしと掻きながら
溜息と共に言葉を吐き出す。
『まぁ…そもそも意味なんて無ぇし。
この花を見て、
王を思い浮べただけだしな。
…婆さんも何も言わなかったし、
大丈夫だろ。多分。』
そう言い訳じみた言葉で
無理矢理、自分自身を納得させる。
そして、
いつの間にか止めていた足を
王の玉座に向けて動かしだした。
ーーー
「この我に献上物、だと？
…中々に度胸のある行動だな、A？」
いつも通りの不遜な態度で
頬杖をし、優雅に足を組みながら
俺を見下す王。
いつも通りの定位置にいるシドゥリは
優しく微笑んで
王に対して口を開く。
「ふふ、A様からの贈り物なんて…
私は楽しみです。」
そう優しく言うと、
シドゥリは俺に目を向ける。
その視線を受け
俺は彼の前に片膝を付き、
花束を差し出した。
花束と言っても、
5輪くらいの小さな物だが。
…だが、王はそれを見て、
____言葉を、失っていた。
俺はそんな彼を見て
『…王？どうしたんだ？』
そう問いかけながら
彼の顔を見る。
その時の彼の赤い慧眼は、
何時もよりも煌めいていたように見えたが…
気の所為、だろうか？
そんなことを考えていたら
王ははっ、とした様に口を開く。
「…あ、あぁ、良い花束だ。
シドゥリよ。
それを受け取り、生けておくがよい。
我の目が届く範囲に、な。」
シドゥリがそれに
「承知しました、王よ。」
と言い、俺の花束を受け取った。
その時の王の表情は
とても嬉しそうな、笑顔だった。
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ヨル(プロフ) - もなかさん» 感想有難うございます〜！頑張りますね！ (2020年4月23日 1時) (
レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - すごいおもしろいです！！！更新頑張ってください！！ (2020年4月22日 15時) (レス) id: ba3cbcb107 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - ディアさん» 有難うございます〜！頑張りますね！(*^^*) (2020年4月16日 12時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
ディア - めちゃめちゃ面白いです！お話の続き楽しみにしてます！更新頑張って下さい！^ - ^ (2020年4月12日 22時) (レス) id: f4badc1d91 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 柚夜─YUYA─さん» 感想有難うございます！面白いと言って頂けて嬉しいです〜！更新頑張りますね！ (2020年4月9日 23時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑飴 | 作成日時：2020年1月26日 20時
