Ep.16 -槍兵の護るもの- ページ22
A視点
「お兄ちゃん大丈夫？どっか痛いの？」
一人の女の子が俺を気にして慌てる。
あとの二人も
口々に俺を心配する。
彼女は…最初に襲われていた子か。
花束を抱えて泣きながら
『わざわざお礼を言いに来てくれたのか。』
なんて考える。
あぁ、やはり此処は___
とても、暖かい。
「べヴィル、カーナ、フィズィア。
先程、貴様らのことを大人共が探しておったぞ。
帰って安心させてやるが良い。
その様子だと…、
もうそ奴には充分であろう。」
王は彼らの名前を呼び、
帰りなさい、と意志を伝える。
彼らは少し躊躇ったが、
素直に王に従った。
「分かりました…。
でも、最後に…本当にお兄さん有難う！」
「「有難う！」」
彼らは最後にもう一度、
満面の笑みでお礼を言ってきた。
『…ｯ！』
頭で考えるよりも体が先に動いた。
驚く彼らをまとめて抱き締める。
『有難う…ｯ！』
あぁ、やっと言えた。
顔は涙でぐちゃぐちゃだが。
その時ちらりと見えた彼らの顔は、
とても嬉しそうだった。
ーーー
俺はまだ泣き止めない。
地面に座り込んで動けない。
俺の目の前には
壁に寄りかかる王様が居るんだろうが、
彼は何も言わない。
そんな俺達を、月は優しく照らし続ける。
すると、おもむろに彼が口を開く。
「貴様は…やはり、
"人間を愛してはいない"のだろう？
いや、違うか…。
"この世界を愛してはいない"、か？」
俺は驚いて顔を上げる。
彼は、その慧眼で
こちらを真っ直ぐに見つめてきていた。
俺は自嘲的な笑いを顔に浮かべながら
言葉を紡ぐ。
『…流石だな、王。
その通りだ。
俺は…
この世界を愛してはいないし、
人間を愛してはいない。
今日ウルクを案内して貰ったのも
人間が多い地区を見る為だ。
…人間を殺す目的の神ならば、
そこに来るはずだからな。』
そう、俺は…
初っ端から
このウルクを救うつもりは無かったし、
初っ端から
この世界を救うつもりなんて無かった。
当たり前だろう？
誰がこんな無意味な世界を愛せるものか。
『…だが。』
俺は涙を拭き、真面目な顔で
王の前に立ち上がる。
彼はそんな俺を静かに見つめている。
『…あの子達のお陰で、俺は初めて…
何かを"守りたい"って思えたんだ。
だから、なぁ、王様。
俺にこのウルクを…
アンタの都市を…
___守らせてくれ。』
俺はそう言って王に頭を下げる。
騎士がする様に跪いて。
彼はそんな俺を見て
満足げに、優しげに
____笑っていた。
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ヨル(プロフ) - もなかさん» 感想有難うございます〜！頑張りますね！ (2020年4月23日 1時) (
レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - すごいおもしろいです！！！更新頑張ってください！！ (2020年4月22日 15時) (レス) id: ba3cbcb107 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - ディアさん» 有難うございます〜！頑張りますね！(*^^*) (2020年4月16日 12時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
ディア - めちゃめちゃ面白いです！お話の続き楽しみにしてます！更新頑張って下さい！^ - ^ (2020年4月12日 22時) (レス) id: f4badc1d91 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 柚夜─YUYA─さん» 感想有難うございます！面白いと言って頂けて嬉しいです〜！更新頑張りますね！ (2020年4月9日 23時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑飴 | 作成日時：2020年1月26日 20時
