Ep.14 -黒と白銀、俺と彼- ページ20
A目線
『はぁっ…あ…ｯ。』
息切れがする。
耳鳴りがする。
頭痛が酷い。
足が動かない。
身体がもう動かないと悲鳴を上げる。
だが、俺はそんな悲鳴を無視して
無理やりに体を動かす。
悪夢から逃げるように。
現実から逃げるように。
だが、無理が祟ったのか
脚がもつれて盛大に転んだ。
土埃が宙を舞う。
視界が一瞬ブラックアウトする。
よろけながらも、壁にもたれながら
どうにか立ち上がる。
その時、自嘲的な笑いが込み上げた。
『…ふっ、くは、ははは…。
あーぁ、くそ格好悪ぃなぁ…俺。』
自分が焦り、転び、ぼろぼろになっている。
こんな姿、他人から見たら滑稽だろう。
そんな自分の姿を思い返したら、
笑いが止まらなくなった。
なんだか一通り笑ったら
少し落ち着いた。
壁に軽くもたれかかりながら
自分の姿を改めて見る。
魔獣の血が所々に散ってたり、
土埃がついていたりして、
なかなかに酷い有様だ。
『…ったく、汚くなっちまったな。』
そう煩わしそうに呟くと、
服についた汚れや
髪についた土埃を
手で軽く叩き落とした。
しかし…さっきの映像は何だったんだ？
落ち着いたところで、
また新たな疑問が頭の中に浮かんだ。
恐らく、あれが"記憶"だろう。
この前も言ったとは思うが、
___俺には幼少期の記憶が無い。
あったとしても朧気だ。
とても頼りになる記憶では無い。
だが、あれが俺が失った記憶だとしたら…
『…まぁ、知るべきなんだろうな。
俺自身の事を、ちゃんと。』
そう思い直すと、
先程の映像を思い浮かべる。
ーーー
きらきら輝く様な金髪の少年。
薄汚れた白銀の髪の少年とは大違いだ。
金髪の少年の周りにいるのは大人。
白銀の少年の周りにあるのは魔獣の死体。
白銀の少年の肌は不健康な程に白く
魔獣の血がやけに目立つ。
あぁ、殺したのに褒めて貰えなかった。
空っぽの頭でそう思い、
金髪の少年に背を向けた。
ーーー
『…ｯ、ここまでが限界か…。』
無理に思い出したせいか、
再び割れる様に痛くなった頭を抱える。
しかし、改めて見てみると__
成程、さっきの状況と酷似している。
周りの魔獣の死体
血まみれな俺
独りぼっちの俺と、人に囲まれる王。
…状況が酷似していれば、
記憶を断片的にだが思い出せるのか。
だとすると、
やはりさっきの白銀の髪の少年は___
その瞬間、風が舞いあがる。
自分の黒髪を視界に入れながら、
俺は美しく輝く月を見上げた。
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ヨル(プロフ) - もなかさん» 感想有難うございます〜！頑張りますね！ (2020年4月23日 1時) (
レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - すごいおもしろいです！！！更新頑張ってください！！ (2020年4月22日 15時) (レス) id: ba3cbcb107 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - ディアさん» 有難うございます〜！頑張りますね！(*^^*) (2020年4月16日 12時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
ディア - めちゃめちゃ面白いです！お話の続き楽しみにしてます！更新頑張って下さい！^ - ^ (2020年4月12日 22時) (レス) id: f4badc1d91 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 柚夜─YUYA─さん» 感想有難うございます！面白いと言って頂けて嬉しいです〜！更新頑張りますね！ (2020年4月9日 23時) (レス) id: a8e58dbd43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蜜柑飴 | 作成日時：2020年1月26日 20時
