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「馬鹿にしてるの…?」


自分でも驚くほど低い声が出た
頭は怒りと切なさと屈辱でいっぱいなのに胸にはまだ恋心が残っていて笑うしかない
彼は、私の声を聞くと心外だとばかりに顔を驚きに染めた


「まさか」


彼の表情がわざとらしくて、ムカついた
もう意味がわからない
けれど、腹ただしく思っていることだけは変わらない


私が遂に涙を零すのを見ると、彼は私に分かっていないといい
子供の様に眉をひそめた


「だって、自分の思い人が告白しきたのにも関わらず、それを拒否した時の顔なんて中々見れませんよ?それに、俺が近づくたびに馬鹿みたいに意識して泣きそうになって苦しんでいて、それを見るためにわざわざ振ったのに…」


狂ってる…


呆気に取られる私に久々知は綺麗に微笑んだ
こいつは頭が可笑しいんじゃないだろうか…?
思わず反射的に後ずさる


口はさっきからパクパクと酸欠の金魚の様に動くだけで、言葉を紡げない
喉からでるのはもはや言葉の意味をなしていない音だけだ


2年間も恋していた久々知が急に別の人間のようだった
私の目の前にいる人物は誰なのだろう
本当に久々知兵助なのだろうか


握りしめていた拳が麻痺してきた
けれど、それすらも気にならない


「俺はA先輩が好きです…だから、どんな表情でも一番近くで見ていたいんです
………… 普通でしょ?」


彼は一度普通の定義を勉強したほうがいいと思う
彼の普通は可笑しい



否、頭が可笑しい



すっかり抵抗する気も失せてしまった
それに、くのたまと忍たまでは差があり過ぎる
いくら私が六年生といっても体術では忍たまの四年生に及ぶかどうか微妙なところだろう



全身から力が抜けた私を見て兵助はすこしばかり笑みを深くした
壁に私を押し付けると、彼の手のひらが私の顎を持ち上げる



「その表情は初めてみせてくれましたね」



久々知は嬉しそうに目を細めると
白魚のような指を私の唇にあてゆっくりと下へとすべらしていく
手は私の首筋で止まった



ぞっと背筋を何かが駆ける
この手に力を入れられてしまえば、どうなるかなど分かりきっている


パッと顔を上げ久々知のを見るとあの黒曜石の様な瞳と目があった
そういえば、目は口ほどに物を言う、と言うなと思い出す
まったくその通りだと思う


だって、かれの目は重く甘く淀んでいたのだから
そして、その瞳に映る自分の怯えた姿がえらく哀れに見えた

う→←い



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奈桜 - こういうのって凄く好きです! (2017年8月5日 20時) (レス) id: 31f66fea9b (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 文章の書き方や話の起承転結が分かりやすくてとても読みやすかったです。面白くて一気に読んじゃいましたww (2016年7月12日 7時) (レス) id: 2afd7876b1 (このIDを非表示/違反報告)
流琉 - 元エオです。名前変えました!この小説、何回読んでも面白いです……! (2016年4月6日 10時) (レス) id: 826410c70b (このIDを非表示/違反報告)
ふりかけカスタード - ヤンデレ最高だぞ…!!!凄くドキドキしました! (2016年4月2日 17時) (レス) id: 6cb576d6d9 (このIDを非表示/違反報告)
荊姫 - エオさん» ありがとうございます! (2016年1月10日 0時) (レス) id: 29760536d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:荊姫 | 作成日時:2015年9月26日 16時

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