鬼の住む街 1 ページ4
Aの家は和菓子の老舗である。
北の実家から西へほどほどに歩くと、道は土から石畳に代わる。
石灯籠の灯りが風に揺れ、石瓦を金色に縁取っていた。風情ある和の道は、夜だと言うにほんのりと明るい。
それがあまりに美しく厳かなものだから、たまに本当に鬼でも住んでいるのかなと考えてしまうのだ。
歩いて行けば、巨大な瓦屋根の長屋が建っていた。
巨大な門の隙間からサラサラと竹の葉が流れる音がした。
この奥には荘厳な建物があり、主に店舗と仕込みを行う大きな台所に分かれている。
昼間はここに「伊勢詣」と書かれた暖簾が下がっているのだ。
これは「狐娘と伊勢詣」からとったらしいと昔Aが言っていたが、その詳しい意味は深く知らないようだった。
この地には昔妖怪が住んでいたなんて噂もあるし、代々続く店だからきっとなにかしらあるのだろうけど。
Aの家は裏手にあるため、塀をぐるっとまわって小さな門をくぐる。
北はスンッと鼻から小さく息を吸った。
昔馴染みとは言え、手土産の一つくらい持ってくればよかったなと思った。
しかしまぁ今更どうしようもないので、彼は身なりだけささっと整えてから呼び鈴を鳴らした。
ピーン…ポーーン…
…ほどなくして、中からパタパタ足音が近づく音がする。
慌ただしい足音は玄関で下駄をつっかえ、そのままピシャン！と扉が開く。
彼女は紺の道行を着ていた。
黒壇の髪は風で広がり、椿よりも紅い唇が北の目を引く。
艶めく瞳が目の前の男を貫く。
彼女はまさに天女の如し佳人であった。
北も慣れているとは言え、その花姿には思わず息を飲んだ。
瞬間、
「信介ッ！」
「わ、」
「もう！また怪我してる！腕見して、青あざ出来てるでしょ！」
「…、A、分かったから飛びかかるんはやめぇ言うてるやろ。危ないわ」
「別に信介が倒れなきゃ危なくないよ」
「またそないな屁理屈言うて…」
北は頭痛を抑えるように眉間を揉んだ。
そもそも自分の青あざだって些細なものだし、なにより16にもなって彼女は少々じゃじゃ馬が過ぎる。
黙っていれば美人なのに、とはもう言う気も出なかった。今更すぎて。
今信介に飛びついたこの無鉄砲こそ、四ノ宮(シノミヤ)A。
老舗和菓子店【伊勢詣】の若女将にして、北信介の昔馴染みというやつだった。
今回、北はこの娘に稲荷崎男バレのマネージャーをお願いしにきたのである。
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星兎う次 - 初めましてー！星兎（ほしうさ)です！次のお話楽しみすぎます！頑張ってください (2022年3月29日 14時) (
レス) @page37 id: f37909bd7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっけ - 面白いですね！ (2021年12月24日 17時) (レス) @page26 id: 0c84fcb925 (このIDを非表示/違反報告)
naonao(プロフ) - 続きみたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい (2021年12月11日 20時) (レス) @page26 id: 89bf261545 (このIDを非表示/違反報告)
とも - めちゃくちゃ面白いです!文の表現の仕方も好きです!更新楽しみにしてます！ (2021年11月15日 2時) (レス) @page26 id: 17c26d4027 (このIDを非表示/違反報告)
空白 - 返信遅れました。ありがとうございます！とっても励みになります〜！これからも頑張りますね (2021年11月6日 9時) (レス) id: de4d0642cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空白 | 作成日時：2021年10月27日 15時
