ジオメトリック・ラブ ren&sho (ページ17)

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まだかな、先輩。

ギュッと掴む水色の浴衣。

未だに残る心のモヤモヤ。

あのチョコバナナ美味しいそうだな、と人混みの出店を見ると、

チラッと見えた見覚えのある顔。

「……永瀬。」

隣には可愛い女の子。浴衣は可愛いピンク色だ。

ほら言った、永瀬にとってはあのキスだってどうせ遊びだ。

「Aちゃーん！」

涙が溢れそうになった時、大声で手にいっぱい食べ物を抱えた先輩が戻ってくる。

あまりにも大きい声だったのか周りの人が見てきて、あの人かっこいい、だの聞こえてきて隣にいるのが私でいいのか、と頭を下げる。

その反動で涙が一筋流れて慌てて指で拭う。

永瀬がそこに残っているかは見てないけど、居たらきっと気付いてるんだろうな。

「どしたん？」

寄ってきた先輩が私の顔を覗く。

「いや、なんもないです！何買ってきたんですか？」

わあ！美味しそう～なんて、焼きそば、たこ焼き、とかいっぱいある食べ物に言っても、いくら私が笑顔でも、

「…Aちゃん、無理して笑わんでええねんで。」

「え？」

先輩はわかるんだろうな。

「涙の跡。なんかあった？」

そう言って私の頬に親指が触れる。

真っ直ぐな瞳を覗くと、平野先輩には全部見透かされそうで。

それでも、良いかなと思わせる力を彼は持っているのかもしれない。

いや、さっきから鳴っている太鼓の音が激しくなったからかもしれない。

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