Genoise【短編集】 (ページ1)

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心の特効薬(木全) ページ1

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残業、残業、残業の毎日。
朝早く出て深夜に帰ってくる、そんな生活ばかり。
今すぐ会社なんて辞めてしまいたいのに生活していくためにはそんな訳にも行かない。

今日も23時を回っていてようやく重い足を動かして帰路に着いている。

｢ただいま.........｣

扉を開けると電気がついていてもしかして、と泣きそうになる。

『おかえり〜！A〜！』

トタトタと部屋の奥から出てきたのは私が今1番会いたかった人。

｢翔也、来てくれてたんだ.........｣

『えっなになにどうしたのA』

私が急に涙目になるもんだから焦り出す翔也。

あなたに会いたかったんだよ、って伝えたいのに言葉がつっかえて上手く出てこない。

｢う〜.........｣

言葉を出すことを諦めた私は靴を脱ぎ捨てて翔也に飛びついた。

『うおっと』

少し後ろによろけながらもしっかりと受け止めてくれた翔也。

『うわ〜、今僕の顔に抱きついて欲しいって書いてた？恥ずかしいなぁ』

泣いてる理由も聞かず、抱きついてる理由すら自分のためだと言ってくれる翔也。
.........いっつも何も考えてない様に見えるけど人一倍周りを見てるし優しいんだよなあ。

そんな翔也の優しさに甘えて子供みたいにわんわん泣く私。
そんな私をよしよしする翔也。

いつもは私がちょっと子供っぽさのある翔也を見守ってるのにこれじゃ私が子守りされてるみたいだなあなんて。