誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ46)

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『そもそも私はあの人がサラのタオルを持ってるのか、持ってるなら寄越せって意味で声かけたのに』

「そうだったんですね、まったく気が付かなかったです」

『そしたら自分がかけてたタオルを被せるとか……一体何考えてるんだ……』

何やらブツブツ呟き始めた金城さん。
その間にタオルを洗濯ネットに入れ、洗濯機に放り込んだ。この際今日使ったハンカチも洗うか……。

洗剤は……うん、少なめで問題ない。柔軟剤はさらに少なく、っと。

『まあでも、それで言ったら私もちょっと危ないかもですね』

「え？何がですか？」

『あの人を退ける時、体押したので』

「不可抗力なんじゃ……」

『って言ってもこっちから触れたことは事実ですから。そのシーンが下手に切り取られて拡散でもしたら、女優業を続ける限りあの人たちとは共演できないでしょうね』

「やっぱり厳しいんですね……」

『共演者の中に彼らのファンがいたとしたら余計厄介ですよ。交友関係が広いので、週刊誌に売り込まれる可能性だってあります』

マネージャーさんからも言われたけど、同業者、というか表舞台に立っている人から言われるとさらに説得力がある。
灯台下暗しとは正にこのことなのかもしれない。

片方が気をつけるだけじゃダメで、お互いに神経質にならないと根本的に意味がないと言える。

「……私どうしたら良いんでしょう」

『まあ役柄的に絡みがあるのは仕方のないことですから、それは別として。とにかくお稽古以外では話さない、もしくは近寄らないのが最善策でしょうね』

「そうですよね……」

『外でのツーショットを撮られない限りは大丈夫だと思いますけど。私もあの人に極力近づきたくないんで、できるだけお稽古以外は一緒にいるようにしましょう』

「……はい、ありがとうございます」

ん？今近づかないじゃなくて『近づきたくない』って言った？

……気のせいか。

『向こうから話しかけてくるようなことがあれば……』

「あれば？」

『全力でシカトしましょう』

「シカトですか！？」

『それに限ります……いや待って、無視するなんて！ってファンを余計に煽ることになるのか？でもなあ……』

結局、挨拶や最小限の会話に留めるということで話は落ち着いた。
決めたは良いけど、問題は私がそれを実行できるかであって。

あとお芝居の方も何とかしないと。