誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ42)

今日:29 hit、昨日:55 hit、合計:41,759 hit

・ページ42

.

「そういえばさ」

「はい？」

食事中。
初のガレット。そば粉が入っているらしいけどすごく不思議な食べ物だ。めっちゃ美味しい。

「主演の人とは話できてる？」

「光源氏ってことですか？」

「そう。ほらあの事務所の……正門さんだっけ」

「前情報なしで初稽古だったので、昨晩知ったばかりです」

「そうだったんだ。正門さんは分からないけど、他のメンバーさんはちょいちょいこっちのバラエティー出てるし、気が向いたら観てみたら？」

正門さんの人となりがわかるかもよ、と続く。
観なよ！と強制してこないあたり、私が稽古とオーディションで詰まっているのを分かってくれているっぽい。ありがたい。

「そうします。……随分舞台慣れしている印象でした」

「過去に主演2本やっているっぽいしねー」

「えっ、2本も！？」

「うん。……あれ、そこまでは調べてない感じ？」

「YouTubeで検索してみてほしいって言われたので……」

検索エンジンの名前を出さなかったのは、恐らく真偽がはっきりしない非公式の情報も混ざっているからだろう。私のも大体そんな感じだし。

とはいえ過去の出演作とかはチェックするべきだった。ドラマを観ることはないけど、どういうお芝居をしてきたのか知れるし。
主演を経験してるなら、昨日の読み合わせでのキャラクター作りの完成度の高さも納得がいく。

「お話は……普通くらいですね」

「あはは、まあ2日目だしそんなもんだよね」

「もし何かあるとしたら、タオル交換したくらいですよ」

柔軟剤残っていたかな。素材的に中々良いものっぽいし、丁寧に洗わなくては。
これを機に新しいものに変えてみるか。

「……タオル交換って言った？」

「はい……それが何か？」

「何か？じゃない！何で！？そんな2日目で親密になるか普通！」

急に捲し立てられてしまった。
慌てて今日の出来事をかい摘んで話す。

泣いたこと。それを見た正門さんがタオルを被せてく貸してれたこと。彼が汗っかきなこと。金城さんと相談して私のタオルを正門さんに貸したこと。

「……なるほどね」

大まかにそれを話すと、マネージャーさんの勢いは少し落ち着いたように見えた。前のめりだった体が今はソファーに沈んでいる。

「悪いことは言わないけどさ」

「はい」

「距離感は気をつけてね」

「……やっぱりそうなんですか？」

「あの事務所に共演NG出されたらおしまいだしね」

うーん……やっぱりなるべく話さないのが良いのかな。

.