誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ5)

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3.誓いは憧れと共にページ5

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事務所に来てほしい。

そんな連絡を受けたのは、例の源氏物語のオーディションから1週間ほど経った日だった。

今私の目の前には、香盤表と言われる役柄とキャストの名前が書かれた一枚の紙が置いてある。
表題は、『舞台源氏物語(仮)』となっている。落ちていたとしたらこれを目にすることはない。
つまりは。

「受かったってことですか？」

「そう。ただ……」

役がね。そう呟いた。

私が希望していた葵上の横には、確かに私ではない、別の女優さんのお名前が書かれていた。

となると別役。

桐壺と藤壺、六畳の御息所、夕顔、弘徽殿の女御、その他数多の女房……どこを探しても私の名前は見つからない。
アンサンブル含め、キャスト数はまあまあ多そうだ。とは言え、そのアンサンブルの中にも私の名前は無い。

必死に目を凝らし探すと、ようやく私の名前が見つかった。
そのまま左に目を動かすと、そこには私の役柄が記載されていた。

空蝉：枡川A

「うつせみ……」

「そう」

満場一致だったみたいだよ、とマネージャーさんの言葉が続く。

最も憧れていた役に私が選ばれた。

その事実がとてつもなく嬉しい。

嬉しいはずなのに、それを自覚した途端、同時に恐怖に襲われた。震えが止まらない。

本当に、

「私で、良いんでしょうか……」

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