誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ38)

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”鼓動が早くなる”は……ある種の興奮状態ってことかな。好きな人を視界に入れているわけだし、そりゃあ興奮もするか。
よく言うドキドキって感じかな。

残りの"世界が輝く””時が止まる”は……

「いや、輝きもしないし止まらないでしょ……」

「比喩って知ってます？」

やはり金城さんは読心術が得意らしい。さすが女優さん。

しかしこうして考えてみて、1つわかったことがある。

「ちょっと気持ち悪さみたいなのもありますね、恋って」

「気持ち悪さですか？」

「これって完全に両思いだったら全然良いんですけど、そうじゃない状態でこう思ったり思われるって考えるとゾッとします……」

「へえ……」

まあ今回の作品のはじまりが一目惚れっていうのもあるかもしれない。

恐らく王道シナリオとしては、男女が出会い、友情を育み、どこかの分岐点で恋に変わる……って感じだろう。というかそれが普通のはず。

私の過去の交際は、その分岐点で気持ちが友情のまま進んでしまったって感じかな。
分岐点、つまり告白された時点かその前後で恋に変わっていたら、もしかしたら今でも交際が続いていた可能性がある。

一目惚れから始まる恋があるのも分かるけど、それって完全に面食い……いや、まあそういう人がいてもおかしくはない。何なら今回の作品はそこに該当する。
ただ現実問題、それで付き合えたとて、長続きはするのか。

……ダメだ、完全に思考がおせっかいなおばさんになってる。

「オーディションは王道ルートなんですか？」

「いや、一目惚れから始まってるので……」

「じゃあ気持ち悪さも必要かもしれません」

やっぱりそうか。
一目惚れかあ……。これもまた、経験がないため感覚が掴めない。

「一目惚れって、結構後を引くと思うんですよね」

ふと金城さんはそんなことを口にした。

「後を引く？」

「まあ要は、その時だけのことにはならなくて、その後もふとした瞬間に姿、表情、雰囲気……何かしら印象に残っているパーツからその人のことを思い出して恋しく思うようになるというか」

何がトリガーになるかは分からないけど、人にはそれぞれ琴線に触れる何かがあって、触れられたからこそ惹きつけられる。
今回の作品の主人公であれば、相手のビジュアル。

ビジュアルがストレートに好みだったからこそ、一目惚れしたってことかな。それが恋になった。

……やっぱり気持ち悪さなのか。

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