誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに (ページ33)

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15.頑固とまっすぐは紙一重ページ33

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「全部忘れてください」

「……ふふっ、大丈夫ですよ。私漫画とかそういうのには疎いんで。……ただそうじゃない人もいると思いますし、気をつけた方がいいかもしれません。子役だっているので」

本当に隣にいるのが金城さんでよかったと心から思う。

けれど彼女の言う通り、いつどこで見られているかわからない。
この舞台関係のならともかく、そうじゃないものは持ち込まない、もしくはそもそも持ち出さないのが吉だろう。

うん、気をつけないといけない。

特に今の状況なら尚更。

「はい、ありがとうございます」

「いえいえ」

とりあえずオーディション原稿は見られないようにファイルに入れておこう。

改めて目の前の彼に目を向ける。

彼が言っていた通り、めっちゃ汗をかいている。ここからでもわかるレベル。

待って。
そんな彼から私はタオルをお借りしてしまったってこと……？え、ヤバくない？拭かなかったら絶対風邪ひいちゃうよ。

ただここまで来て、一瞬でも女の頭に乗っかったタオルを返したとてそのまま使おうってなるのだろうかと思考が止まる。答えは恐らく否。

……ちょっと聞いてみよう。

稽古中に良くはないけど、台本を裏返し文章を走り書きして金城さんに見せる。

『異性に貸したタオルがそのまま返ってきたら、そのまま使いますか？』

そんな私の質問に彼女は一瞬考えるような表情をした。
しかしすぐに、私が書いた文章の下に答えを書いてくれた。

『無理ですね、3回は洗濯しないと使えないです』

もちろん男女で意見の違いはあるだろうけど、それでも至極真っ当な意見であることには変わりない。

やっぱりそのまま返されるのは嫌だよね……。

よし。

『ありがとうございます』

私が書いたその言葉に、彼女は静かに頷いた。

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空蝉のシーンをやることなく、再び休憩時間になった。

正直抵抗は若干あるけど、仕方がない。

正門さんは1人で座って休憩している。
……うん、今しかない。

「正門さん」

「枡川さん、お疲れ様です。もう良さそうですね」

「はい、おかげさまで。ありがとうございます、それで、その……」

「ん？」

先ほどよりはマシだけど、それでも彼の額には汗が浮かんでいる。
自分の体質を省みず貸してくれた彼には、どうやったって頭が上がらない。

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